研究課題/領域番号 |
23560643
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
藤川 陽子 京都大学, 原子炉実験所, 准教授 (90178145)
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研究分担者 |
菅原 正孝 大阪産業大学, 人間環境学部, 教授 (60026119)
濱崎 竜英 大阪産業大学, 人間環境学部, 准教授 (50340617)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | ボルタンメトリ / 砒素 / 重金属 / 電極 |
研究概要 |
今年度は主に以下の3項目の検討を行った.(1)溶出ピーク測定時の容量電流による誤差の検討: ボルタンメトリ法における溶出ピークをえる過程において,容量電流(バックグランド)と信号ピークに相当するファラデー電流を分離する必要がある.著者らの使用装置でこの手順がどうなっているかを装置メーカーに確認の上,異なる電位走査速度下で試験を行った.(2) 作用電極表面状態の観測: ボルタンメトリ法による日常分析で測定誤差が発生する要因としては,直接的には溶液攪拌の不均一や電極の電気的接触等の装置の不具合によるもの,ならびに試料中の共存物質や試料中の目的元素の化学的存在形態による測定干渉,が多い.ただし上述の場合も,装置不具合や試料組成の影響で作用電極の表面状態の変化が起こり,結果として測定誤差につながっているケースが多い.また,たとえば塩酸(支持電解質)と目的元素しか含まない溶液を測定する際にも金電極などで感度低下が起こることがあり,その原因として電位走査の結果,作用電極の表面の金の酸化状態あるいは塩化物イオンとの結合が変化したとの解釈もありうる.このような電極表面の状態変化については理論的に,あるいは状況証拠から様々な推測が可能であるが,電極表面状態の直接的な観測によって推測を裏付けた例は極めて少ない.そこで今回,表面敏感な元素の存在形態分析法として,X線吸収微細構造(XAFS)分析のひとつである転換電子収量法の適用について検討した.転換電子収量法はオージェ電子の観測でXAFS測定を行うが,電子は飛距離が短いため,試料表面にかなり近い領域のみの情報を与える表面敏感な方法となる.(3)現場におけるボルタンメトリ法の自動分析:浄水場に装置を設置し水中砒素濃度の観測を開始した。原子吸光法による分析結果との比較も行い、自動分析手法の改善に努めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ボルタンメトリ法における測定干渉要因を科学的に同定し、改善方策を見出すことが本研究の目的である。2011年度はボルタンメトリ法における溶出電流サンプリング法による測定誤差を解明して査読つき論文とすることができた。また、作用電極の表面状態について転換電子収量XAFSによる検討を行っている。さらにボルタンメトリ法による現場での連続自動分析装置も設置し、自動分析時の装置性能の検討にも着手できた。
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今後の研究の推進方策 |
転換電子収量XAFSによる作用電極表面の観測の結果、より表面敏感な手法で観測を行うことが必要なことがわかった。今後は、オージェ電子分光法等による電極の分析について試行する。現場に設置した連続自動分析のボルタンメトリ装置においては、低濃度での分析の正確さの改善が必要になっている。観測環境を整備し、低濃度での測定精度の向上方策について引き続き検討する。また、現在の装置に別の電極を接続して、分析の感度精度を高めると共に、バックグランド電流の誤差を低減する方策を検討する。手持ちのボルタンメトリ装置にオートサンプラを接続して、複数試料の全自動分析を可能にする。
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次年度の研究費の使用計画 |
以下を予定している。オートサンプラ購入費:40万円、使い捨て電極購入費:10万円、オージェ電子分光法による電極表面分析のための旅費、京都府向日市の現場の自動分析装置の保守管理のための旅費:40万円程度、オージェ分析装置借用料、向日市の現場装置の維持管理:20万円試薬類 容器類:20万円 グラッシーカーボン電極等の補充等のその他消耗品
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