研究課題/領域番号 |
23560643
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
藤川 陽子 京都大学, 原子炉実験所, 准教授 (90178145)
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研究分担者 |
菅原 正孝 大阪産業大学, 人間環境学部, 教授 (60026119)
濱崎 竜英 大阪産業大学, 人間環境学部, 准教授 (50340617)
尾崎 博明 大阪産業大学, 工学部, 教授 (40135520)
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キーワード | ボルタンメトリ / 微量元素 / 分析 / オンサイト / 自動化 |
研究概要 |
我々はアノーディック・ストリッピング・ボルタンメトリ(ASV)法による環境水試料中の微量元素分析について検討してきた。同法の装置は、多くの公定法分析の装置と比し安価だが、環境レベルの微量元素分析に使える感度があり、運転にあたって特殊なガス等を必要とせず、現場に携帯しての分析に適する。そこで、今年度はこのようなASV分析の特徴を生かし、ASV装置を野外に設置して、自然地質由来の砒素を含む地下水を処理している鉄バクテリア生物濾過法(鉄バク法と略称)のパイロット装置の原水および処理水質をモニタリングするのに使用した。並行して公定法分析によりASVとのクロスチェックも行い、比較的良い合致を得たにもかかわらず、現場での長期の砒素モニタリングでは必ずしも想定していたような濃度値がえられなかった。そのため、現場設置のASVによる標準液測定の感度と外気温・電極まわりと試料水温の温度の変化を夏季から冬季にかけて監視して、自動化したASV分析装置の分析性能の安定性や信頼性を検討した。その検討の結果、野外設置の装置では室内での分析時と異なる外気温の変動の影響が測定の正確さに影響を及ぼしていると判断した。冬季には気温変化1℃あたり1から4%の感度変化が起こっていることが統計的な解析の結果から判ったが、高温期などにはその傾向が不明瞭になった。これは電極劣化の速度が夏季に増加しているためと考えたが、室内試験およびこの夏の検討結果から再度確認する。また、年度末近くにASV自動分析装置を改造し試料と標準溶液の温度を均一化する試みを行ったので、現在その結果を解析中である。本格的に装置性能の安定化が測れれば、鉄バクテリア法水処理システムにおける逆洗後の砒素除去特性の経時変化等を自動測定により追跡することを予定している。また、別途、オートサンプラと組み合わせた試料自動分析システムも開発適用することを考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
野外に設置した自動モニタリング用のボルタンメトリ分析装置は、室内試験で予測したよりも安定性が悪く、その原因の究明や装置の基本的な性能の確認に時間を要した。測定干渉にかかわる様々な因子のうち、水中の共存物質(特に硫黄分)についてはこれまでの室内実験の結果から十分に予測していたが、設置環境(室内か野外か)に由来する測定結果への干渉は必ずしも考慮していなかったことが原因である。
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今後の研究の推進方策 |
ボルタンメトリの利点は携帯可能・高感度・自動化や現場に設置しての連続モニタリングが可能であることである。装置の感度や安定性に及ぼす要因を可能な限り排除し、標準的な環境水や排水について、砒素・鉛・鉄・亜鉛・銅などを中心に自動化した分析を確立する方向で研究を進める。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度はボルタンメトリ測定の自動化のために使用するオートサンプラ(50万円以下)、および現有の装置と安定度を対比するためのポテンショスタット(50万円以下)の購入を予定している。また、野外設置のモニタリングのボルタンメトリ装置について、安定化を図るために平成23年度末に各種改造を施したがその成果について確認したい。自動化した装置は福島第一原発自己由来の放射性物質を含むサンプル中の微量元素分析などにも適用する予定で、放射能で汚染しても使い捨てできる電極の使用も含めて検討を行い、上記用途の各種消耗品や試薬を購入する。
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