人口減少と高齢化が顕著に進む地方の小規模自治体における環境施設の経営は,未整備地域の整備と,それを含む現存計画施設の供用期間中に破綻が生じることなく進めるとともに,次期間の社会の変化に向けた再構築も念頭に置く必要がある.人口減少時代において,とくに長期的には存立が危ぶまれる可能性もある小規模自治体を対象とした明確な環境施設計画論は示されていない.本研究では,これをサステナブルソフトランディングと名付け,その具体的な定義付けを行うとともに,その実施手法を開発して,小規模自治体の健全な環境施設経営の方法を提案する. 将来の人口が減少する場合に,事業のツケを次期に持ちこさないために,下水道事業を取り上げ,現施設をその耐用年数に渡って利用する全員で負担を分担することを検討した.下水道の整備状況により供用開始から整備完了まで全期間にわたり生存する世代では,生涯の負担を等しくできるが,地域間の格差を定量的に示して,格差に見合う他の行政サービスでその解消を目指すことを提案した. 人口減少社会に向けて,効率的にしかも現存する利用者に支障を及ぼさないように施設を更新していく方法として,管路施設の更新と道路の工事とを関連づけて費用を抑制する方法,破損のリスクを低くしつつ,利用環境に支障を与えずに将来に向けて管路のダウンサイジングをしつつ更新を進める方法について提案をした. 長期にわたって費用効率のよい事業経営を行うために,施設の長寿命化が行われるが,人口減少を念頭において施設の長寿命化を実施するタイミングを決定する手法を提案した. このように本研究においては,人口減少が進む中で,更新と整備を進める必要がある上下水道システムを運営していく方法について,具体的なケーススタディを実施しながら提案を行った.
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