研究課題/領域番号 |
23560648
|
研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
関戸 知雄 宮崎大学, 工学部, 助教 (50301015)
|
キーワード | 家畜埋却地 / 環境負荷 / 悪臭成分 / 有機物 |
研究概要 |
本年度実施予定であったバッチ分解実験を行った。粉砕した模擬家畜試料から発生するガス量および有機物分解量の推定を試みた(RUN1)。また、埋却初期に発生する悪臭物質の種類と量を明らかにするための実験を行った(RUN2)。さらに、昨年度より継続しているカラム実験から発生する浸出液中無機イオン濃度の測定、およびカラム内部試料の分析を行い、物質収支を明らかにした(RUN3)。 RUN1の結果より、埋却前の模擬家畜と埋却実験後22か月経過した模擬家畜を比べると、ガス化可能炭素量は約半分に減少していることが明らかとなった。ガス発生は、いずれの試料もおよそ40日目で停止した。なお、模擬家畜中炭素ガス化率は非常に低く、約3%以下であった。実験中の水溶性の有機物濃度変化がほとんど見られなかったことから、水溶液中有機物のガス化が律速となっていることが示唆された。また、下水消化液により希釈をすることで、アンモニアの阻害の減少を試みたが、十分に阻害を除去することができず、嫌気発酵が進まなかったと思われる。 RUN2の結果より、埋却初期に発生するガス量と悪臭成分の濃度が推定できた。ガス量は、埋却直後から約2週間で急激なガス発生があり、その後のガス発生はなくなった。この間のガス発生速度は、0.8~0.5mL/day/g-wetであった。悪臭成分は、メチルメルカプタン(約1000~4000ppm)、硫化水素(1700~5000ppm)が検出され、アンモニア濃度(7ppm)は低かった。非常に高いため、埋却初期の臭気対策技術の提案が今後必要である。埋却地からのガス発生対策は、埋却初期のみでよいことが示唆された。 RUN3では、カラム試験で発生する浸出液中の有機物濃度と無機成分濃度を比較した。その結果、カラム中の水溶性有機物は、ほぼ降雨の希釈によって濃度低下が起こっていることが分かった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度に開始した模擬家畜を用いたカラム実験を継続し、長期間発生する浸出水量や有機汚濁成分濃度について明らかにすることができた。本年度、降水を行っていないカラムからのガス発生がほぼ停止した。このため、計画を変更してこのカラムを解体し、内部試料の変化を分析することとした。また、浸出液中の無機イオン成分についても測定を行い、有機物の溶出パターンとの比較を行うことができた。 バッチ実験では、粉砕試料を消化液等で希釈することでアンモニア濃度を低下させることで、ガス発生を促進させて実験を行うことができた。また、埋却初期のガス発生速度と悪臭成分について測定値を得ることができた。 埋却地から発生する汚濁物質の不飽和浸透モデルの作成を行った。2次元への拡張を行うことができなかったが、今後は、カラム実験等から得られたパラメータを用いて汚染拡散のシミュレーションを試みる。 以上より、現在までの目標はおおむね達成していると判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
本年度は、カラム試験を継続し、計画通り平成25年10月以降カラムを解体し、充填試料(模擬家畜、土壌)を採取する。各試料について、CHN、無機成分等の含有量成分を測定する。さらに、蒸留水による振とう溶出試験を行い、水溶性成分を測定する。これにより、実験期間中に系外に流出した物質量およびガス化した炭素量を把握し、物質収支を明らかにする。 また、埋却地からの浸出液による汚染物質挙動を表現する数値モデルを開発する。これにより、埋却方法の違いによる汚染物質の地下水への影響について明らかにする。モデルで用いる水分特性曲線や拡散係数等は、様々な条件に対して数多くの研究がなされているため、本研究ではそれらを文献値として引用し、計算を行う。なお、本モデルでは、実際の家畜埋却地から発生している地下水汚染状況を推定するものではなく、単純な系での汚染物質の広がり方と埋却方法との関係を明らかにすることを目的とする。 以上より、最終年度である平成25年度は、本研究の目的である、家畜埋却力の地下水への影響予測と環境低負荷な家畜埋却方法の提案を行う。加えて、本研究の成果を論文として公表することで、社会貢献を行う。 今後は埋却後の土地利用、あるいは土壌改善の技術が社会的に求められる。こうした技術開発に必要な基礎的情報についてもまとめる。
|
次年度の研究費の使用計画 |
(1)継続的にカラム実験より発生するガスや浸出水水質測定を実施するために、薬品等および測定装置運転に必要なガス等の消耗品を購入する。 (2)学会発表用の旅費として使用する予定である。 (3)研究成果のまとめ、および数値計算のための参考とするため、関連図書の購入や文献の取り寄せのための費用として使用する。 (4)実験を円滑に進めるため、補助として学生を雇用するための費用として謝金を使用する。
|