研究課題
薬剤耐性菌については,ESBL産生菌と呼ばれる第三世代セファロスポリン系の薬剤に耐性を持つ耐性大腸菌を重点的に調べた。多摩川においては,調査大腸菌2,715株のうち,比較的古いアンピシリン耐性株は12.6%であり,ESBL産生菌と考えられるCTX耐性株は2.3%であった。また,GM耐性株は2.0%, LVX耐性株は1.8%であり,MPM耐性株は見られなかった。これらの比率は,同時に実施した大学下水処理水における比率と類似していた。都市河川環境でフルオロキノロン耐性やESBL産生菌のうち第四世代セファロスポリンにまで耐性を持つ菌が選択されやすい可能性がある。また,カルバペネム耐性菌は大腸菌には検出されなかったが,河川から,カルバペネムの効かない細菌として,Stenotrophomonas maltophilia,Pseudomonas aeruginosa,Acinetobacter baumanniiが検出された。また,藍藻Microcystis aeruginosaへの抗生物質の生長阻害を調べたところ,キノロン系抗菌薬であるレボフロキサシン及びシプロフロキサシン1μg/L~3μg/Lから生長阻害を示し,キノロン系抗菌薬は藍藻に対し顕著に毒性を示すことが示唆された。さらに,1. 本来増殖のために外部から有機物を必要としない独立栄養の硝化菌が共代謝で医薬品を分解できる可能性が高いこと,2. 活性炭への医薬品の吸着においてフミン質などの共存有機物がイオン性医薬品に対してより中性医薬品の吸着を大きく阻害すること,3. ベトナムハノイの水環境における消炎鎮痛剤系の医薬品の存在状況,4. 下水処理施設や汚染の進んだ場所から採取した硝化細菌群集と菌株Nitrobacterは抗生物質感受性スペクトラムが大きく異なること,についても明らかにした。
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