研究課題/領域番号 |
23560654
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
神子 直之 立命館大学, 理工学部, 教授 (70251345)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 無水銀光源 / 水処理 / 病原微生物 / 不活化 / 微量有害物 / 促進酸化 / エキシマランプ |
研究概要 |
水に紫外線を照射する処理は上下水道どちらにおいても使用されているが、一般的に用いられている光源が低圧紫外線ランプであり、封入されている水銀の事故時の流出および使用後の廃棄の問題が懸念されている。そこで、適用例のないUVLED、エキシマランプ等の無水銀光源を用いて、従来の光源と同様の効果が得られるのか調べることに加え、新たに使用できるようになる254nm以外のUVC領域波長の微生物不活化および微量有害物分解に対する効果を調べ、基礎的なデータを得ることを目的とした。 平成23年度は、従来の254nm紫外線を発する低圧紫外線ランプ、波長222nmのエキシマランプ、波長282nmのエキシマランプを用い、その用途のスクリーニングを研究の目的として実験的に検討を行った。 微生物の不活化に関しては、ウイルス、細菌の不活化実験を行った。現在までの経験あるいは既往文献より、紫外線による不活化の多くは一次反応的に記述されるため、少なくとも99.9%不活化まで様々な紫外線照度で不活化を行い、反応速度定数としての90%不活化紫外線量を各微生物および各光源において求めた。その結果、3種の大腸菌ファージのいずれにおいても、222nmエキシマランプは254nm低圧紫外線ランプの約50%、282nmエキシマランプは254nm低圧紫外線ランプの約2倍の紫外線量を90%不活化に要することが明らかになった。 微量有害物の紫外線を用いた分解に関しては、モデル有害物としてトリクロロエチレンを選定し、過酸化水素、第一鉄イオン、シュウ酸イオンそれぞれの共存下で254nmおよび222nm紫外線を照射し、有害物濃度の変化を調べた。その結果、222nm紫外線の効果は254nmの効果を上回り、その有効性が明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成23年度計画の光源のスクリーニングに関しては、微生物および微量有害物の両者に対して実験を遂行し、基礎的データを得た。さらに、平成23年3月に生じた東日本大震災において被災した下水処理場の応急復旧対策において紫外線照射が有効である可能性について着眼し、当初の研究計画に無かった課題である、簡易下水処理水への紫外線照射の適用についても検討を開始した。その結果、無水銀紫外線ランプのうち長波長のものは従来の254nmよりも吸収が小さく、より効率的に微生物の不活化を行える可能性を示した。この点において、本研究は当初の計画以上に進展していると評価した。 一方で、研究で用いている光源が市場において購入可能なものではなく特注品であり、出力、寿命、形状等の仕様が変更されやすいため、放射特性の把握については翌年度に持ち越すこととしたが、仕様が決定され次第検討可能であるため、遅れにつながるとは考えていない。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画に従い、実際の上下水道システム適用のためのテーブル実験を行う。さらに、平成23年度より取り組んでいる、被災下水処理場の応急復旧対策の一つとして紫外線照射がどの程度有効であるか、被災下水処理場の実簡易処理下水を用いて実験的に検討を行う。中でも重要なのが、紫外線透過率の低い水に対する連続的照射槽における反応速度の検討であり、種々の光源および被照射液を用いて実験を行う。 それらの検討を踏まえ、上下水道の代表的な水に対する紫外線照射の効果を最大限にするための設計法を検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
主に紫外線照射の効果を調べるための試薬類およびガラス器具の購入に充当する。一方で被災下水処理場への効果を調べることが重要と考えたので、従来の254nm波長低圧紫外線ランプを用いた実処理機のレンタル料や輸送費についても支弁することとする。それら実験を遂行する上での実験補助の謝金、被災地や国内における研究発表会場への移動のための旅費としてそれぞれ用いる。
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