研究課題/領域番号 |
23560656
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研究機関 | 国立保健医療科学院 |
研究代表者 |
島崎 大 国立保健医療科学院, 生活環境研究部, 上席主任研究官 (60322046)
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研究分担者 |
秋葉 道宏 国立保健医療科学院, その他部局等, 統括研究官 (00159336)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 透析用水 / 衛生管理 / 細菌 / ATP |
研究概要 |
透析用水の生菌数分析における時間短縮を目的として、R2A培地を用いた混釈培地法の代替としてATPアナライザおよびATP消去剤キットを用いた迅速なATP濃度測定法の適用を試みた。 供試細菌として同化性有機炭素(AOC)分析に持ちいるPseudomonas fluorescens P17およびSpirillum sp. NOXを用い、所定濃度の酢酸ナトリウム溶液を添加した滅菌・有機物酸化済みガラス製三角フラスコに植菌した後、20℃のインキュベータ内に静置し、2~3日おきに各菌数をR2A混釈培地法およびATP測定法により計数し、各菌体の最大増殖量を求めた。ATP濃度の分析には、ATPアナライザ(東亜DKK社製 AF-100)および消去剤キット(同社製AF-3X2)を用い、試料の濃縮を行わない「直接法」と0.45μmフィルター濃縮を行う「ろ過法」との比較を行った。 R2A混釈培地法による細菌数測定値とATP測定法によるATP濃度との相関について、直接法では細菌数とATP濃度との間に有意な相関がみられたものの、ろ過法では全く相関がみられなかった。殊に、後者では分析値が大幅にばらつく結果となっており、この原因として、測定者間の操作の相違や作業工程における外部からのATP汚染の可能性が示唆された。 以上、直接法を用いたATP測定法によって混釈培地法を代替できる可能性が示されたものの、ろ過法では分析精度の低下が著しく現れた。ATP濃度の測定感度は直接法よりもろ過法のほうが優れているため、同一測定者による測定手順の均一化や、汚染防止等の対策によるろ過法の分析精度の向上が必要である。また、細菌中のATP濃度は対数増殖期の後に低下することが示唆されたため、各供試細菌の増殖フェーズに留意した適用が必要になると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
昨年3月に発生した東北地方太平洋沖地震、および、東京電力福島第一原子力発電所での原子力災害に伴って発生した水道水中への放射性物質の汚染への緊急対応などにより、今年度の研究計画のうち、各医療施設における透析用水の供給状況および透析用水原水中細菌数の調査の実施に遅延が生じている。
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今後の研究の推進方策 |
翌年度以降においては、細菌数の増殖が想定されるに夏季を中心に、医療施設内の透析用水原水および透析用水製造過程を対象とした採水調査を行い、従来法の平板培養法との比較により、ATP測定による細菌迅速定量法としての適用可能性を明らかにする。採水箇所としては、医療施設の貯水槽、高架水槽、末端の蛇口、および、透析用水製造装置うち、残留塩素が除去される活性炭フィルター後、RO(逆浸透ろ過)後、UF(限外ろ過)後とする予定である。 なお、本年度において進捗が得られなかった各医療施設における透析用水の供給状況および透析用水原水中細菌数の調査については、上記医療機関での実態調査と併せて実施する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度の調査に用いる予定であった交通費および試料の運搬費を次年度に繰り越す。次年度に請求する研究費は、当初計画どおり実態調査における分析試薬や実験消耗品の購入等に使用したうえで、上記の交通費・運搬費に相当する額については、分析試料数の追加に充てたい。その他、情報収集および成果発表に係る旅費を計上する見込みである。
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