研究課題/領域番号 |
23560656
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研究機関 | 国立保健医療科学院 |
研究代表者 |
島崎 大 国立保健医療科学院, 生活環境研究部, 上席主任研究官 (60322046)
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研究分担者 |
秋葉 道宏 国立保健医療科学院, その他部局等, 統括研究官 (00159336)
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キーワード | 透析用水 / 衛生管理 / 生菌 / ATP / エンドトキシン |
研究概要 |
透析用水の生菌数分析における時間短縮を目的として、R2A培地を用いた混釈培地法の代替としてATPアナライザおよびATP消去剤キットを用いた迅速なATP濃度測定法の適用を試みた。 透析用水原水に公共水道と地下水を用いる病院において、2012年夏季の週初めと週末の各1回、貯水槽、透析用水製造過程、カプラから採水し、生菌数、ATP濃度、ET活性値、残留塩素濃度等を測定した。 地下水中の生菌数は320-450CFU/mL、ATP濃度は49.8-94.0pmol/L、ET活性値は0.67-0.79EU/mLであった。公共水道と地下水の混和後の貯水槽では生菌数は4.0-7.5CFU/mL、ATP濃度は検出下限未満まで低下したが、ET活性値は3.1-11.4EU/mLに上昇した。透析用水製造過程のうち、ETRF後から僅かに生菌が検出されたが(0.7CFU/mL)、ATP濃度とET活性値は検出下限未満であった。 以上の結果より、生菌数が約300CFU/mLを超える場合にATP測定による生菌の検出が可能であると推察された。ただし、生菌数とATP濃度との間に明確な相関は見られなかった。なお、エンドトキシン濃度については、地下水と公共水道が混和する貯水槽以降で大幅に増大することから、①ほとんどが公共水道に由来する可能性、および、②塩素消毒により地下水中の生菌から新たに生成する可能性が示唆された。 このように、透析用水製造過程でのATPを測定することで、所定レベル以上の生菌数を迅速に検出できる可能性が示されたものの、検出感度の向上が課題となった。今後は、試料濃縮によるATP検出感度および精度の向上や、他の時期ならびに他の医療機関での採水調査の実施を進める計画である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度において実施できなかった、各医療施設における透析用水の供給状況についてのヒアリング調査ならびに透析用水原水中細菌数の調査を、今年度の透析用水製造過程を対象とした採水調査と同時に実施できた。ただし今年度の調査対象とした医療施設数が2カ所と限られているため、来年度も引き続き、他の施設での調査を行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
翌年度においては、今年度に続いて他の医療施設における採水調査を行い、従来法の平板培養法との比較により、ATP測定による細菌迅速定量法としての適用可能性を明らかにする。採水箇所としては、医療施設の貯水槽、高架水槽、末端の蛇口、および、透析用水製造装置のうち、残留塩素が除去される活性炭フィルター後、UV/RO(紫外線/逆浸透ろ過)後、UF(限外ろ過)後とする。なお、採水時期は給水系における細菌の再増殖が想定される夏季を中心として、可能であれば、貯水槽の定期清掃の前後における比較を行いたい。 以上の採水調査およびヒアリング調査の結果を基に、水安全計画(水道版HACCP)における危害同定の手法を適用することで、透析用水製造過程における衛生上の重要管理点を抽出する。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度に請求する研究費は、当初計画どおり、実態調査における分析試薬や実験消耗品の購入、交通費・運搬費に使用する。また、成果発表に係る旅費を計上する予定である。
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