研究課題/領域番号 |
23560664
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
堀田 久人 東京工業大学, 理工学研究科, 准教授 (20190217)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | L形接合部 / せん断耐力 / 折り曲げ半径 |
研究概要 |
研究実施計画に基づき、主筋降伏、及び主筋の付着が確保されるための最小ボリュームを調べる目的で、引張主筋を接合部内で通し配筋としたL形接合部試験体5体の実験を実施した。実験変数は、試験体厚さ(接合部外寸200mm×200mmに対して50mm厚及び、80mm厚の2種類)及び、引張主筋の接合部内での折り曲げ半径(主筋はD10使用で、20mm、26mm、80mm)の3種類である。前年の予備実験から、主筋の折り曲げ半径が支圧強度に相当影響することが示唆されたため、折り曲げ半径を新たに実験変数に加えている。実験結果は折り曲げ半径が大きい(80mm)場合、厚さの薄い(50mm)ものでも接合部は破壊せず、部材の曲げ降伏で耐力が決定されること、部材厚さが80mmの場合は、折り曲げ半径が20mmの場合は接合部破壊、26mmの場合で部材降伏となり、部材降伏のための必要ボリュームが主筋の折り曲げ半径に依存することを示した。一方、曲げひび割れはすべての試験体において、主筋折り曲げ部近傍から生じており、本実験範囲では、コンクリートのボリュームのみで主筋の付着を確保し得る境界は見いだせなかった。が、折り曲げ部以降の曲線部には大きなひび割れがないことから、主筋にRをつけることが、接合部強度および復元力特性の改善の有力な手段になり得ることを見出した。続いて、実際の接合部のディテールに近い接合部内で引張主筋を重ね継手とした試験体3体に関する追加実験を実施した。実験変数は主筋の折り曲げ半径(26mm、80mmの2種類)である。結果としては、通し配筋の場合と異なり、早期に接合部の頂部付近に斜めひび割れが生じること、折り曲げ半径が小さい場合は、このひび割れが、鉄筋とコンクリート間の応力伝達を阻害すること、折り曲げ半径の大きい場合はそのひび割れの悪影響を回避できる可能性があることを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画の内、主筋の降伏を確保し得るコンクリートのボリュームに関しては実験により概略把握できるに至ったこと。当初影響変数として単純にコンクリートのボリュームを考えていたが、主筋の折り曲げ半径もまた影響因子になっており、これが接合部性能の改善の手段ともなり得ることを見出したこと。以上2点より、当初計画通りとは言い難いが、一定の成果は得ているものと評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
平成23年度の実験においては、実験の影響因子をできるだけ単純化する目的から接合部内に横補強筋を配筋していない。次年度以降は、いわゆる横補強筋や、その他の補強配筋によって、本年度の実験で見られた接合部内に生じる斜めひび割れを防げるかどうか、また、当初計画通りの主筋の付着を確保し得る補強配筋方法を、主筋の折り曲げ半径と合わせて考えたい。検証は本年度と同様に縮小模型実験による。試験体数は4~6体を計画する。
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次年度の研究費の使用計画 |
4-6体の試験体費として物品費を、実験に関する実験補助謝金を、また平成23年度実施の研究成果の公表(学会発表等)の旅費の3種を計上している。
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