研究課題/領域番号 |
23560664
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
堀田 久人 東京工業大学, 理工学研究科, 准教授 (20190217)
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キーワード | L形接合部 / せん断耐力 / 折り曲げ半径 |
研究概要 |
前年度に実施した実際の接合部のディテールに近い接合部内で引張主筋を重ね継ぎ手とした追加実験では、接合部内通し配筋の接合部と同様に主筋の折り曲げ半径が、接合部のせん断強度に影響を及ぼすことは示されたものの折り曲げ半径の大きな試験体において定着長さの不足により最終破壊形式は主筋の定着破壊となり、接合部内で通り配筋とした場合の部材の曲げ降伏のような好ましい破壊形式とはならなかった。また、接合部内はいずれも横補強筋を配しておらず、横補強筋の影響に関しても明らかになっていないことから、横補強筋の有無と主筋の折り曲げ半径をパラメータとする試験体3体による実験を実施した。結果として、接合部内で重ね継ぎ手を有する場合でも、①定着長さが確保されていれば、折り曲げ半径を大きくとることによって破壊形式を接合部破壊から部材降伏へと移行せしめること、および②横補強筋が接合部のせん断強度を高めるのに有効であることを示した。 また、L形接合部のせん断余裕度を十字形接合部と比較する目的から接合部がほぼ同一配筋となる十字形接合部実験を実施した。結果として、接合部強度は十字形の場合のほうがL形より高いものの、その程度は現行の設計式で示される2.5倍ほどの差異はなく、折り曲げ半径が通常の標準フック程度の場合でも十字形接合部がL形の1.4倍程度の強度を持つにすぎないことを示した。さらに主筋の折り曲げ半径を大きくした場合には接合部強度は標準フックのそれを大幅に上回ることから、配筋のディテールによって、現行の設計式が大幅に改善しうる可能性があることを示した。 さらにL形接合部の開角方向への載荷実験も実施し、折り曲げ半径が開方向においても接合部の強度に影響するものの、半径が大きい場合の定着方法に課題があることを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初L形接合部の閉角方向のみの性能について配筋法と合わせて明らかにすることを本研究課題の目標として設定していたが、ほぼその目的は本年度のL形接合部の実験で、実ディテールに近い接合部において主筋の折り曲げ半径の影響および接合部の横補強筋の影響を明らかにしたことによって達成しえている。 追加実験では、十字形接合部との比較実験および、L形接合部の開方向への加力実験を実施しており、研究目的は既にL形接合部の総合的な合理的配筋法の開発にシフトしており、研究は当初の計画以上に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
これまでは十字形接合部に対する実験を除き、L形に対しては閉方向あるいは開方向の1方向に単調に加力する実験を実施してきたが、やはり耐震性等の問題を考える上では開閉両方向の繰り返し挙動の把握が重要である。 また、従来の試験方法は、本研究代表者の実験方法に限らず、梁に付加軸力が発生する形になっており、実際の地震時の接合部とは異なる加力が為されている。これを改善し、実際の地震時の接合に近い載荷実験の計画実施が次年度の研究の方向である。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度経費の使用を節約したため20,871円の未使用額が発生している。次年度においては本年度の未使用額を含めて、以下について研究費の使用を計画している。接合部の応力状態が実際の地震時に近くなるような加力形式と従来型の加力形式によるL形接合部の繰り返し載荷実験を実施する。4体の試験体費を物品費として計上する。またその他は、研究成果公表のための諸経費、最終報告書作成費等である。
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