研究課題/領域番号 |
23560665
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研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
楠 浩一 横浜国立大学, 都市イノベーション研究院, 准教授 (00292748)
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研究分担者 |
田才 晃 横浜国立大学, 都市イノベーション研究院, 教授 (40155057)
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キーワード | 応急危険度判定 / 地盤と建物の相互作用 / ロッキング挙動 / ヘルスモニタリング / 等価線形化法 / 加速度計 / 加速度計 |
研究概要 |
本年度には、ロッキング挙動に着目し、杭部での鉛直方向の降伏を再現した全体曲げ破壊形の試験体を作成し、非線形領域を含めたロッキング挙動の分離の可能性について検討を行った。具体的には,平成23年度に実測した東北地方太平洋沖地震の際に横浜国立大学建築学棟で実測されたロッキングによる建物基部での鉛直変位を再現できる鋼製ばねを作成し,同建物の周期を考慮した鋼製の3層平面試験体を作成した。鋼製ばねは,浮き上がり時に試験体と離れ,ロッキング挙動が非線形弾性となるものと,あらかじめ初期縮みを導入することにより,浮き上がり時にも試験体と離れず,ロッキング挙動が線形のものの2種類を用意した。また,鋼製ばねの剛性についても,さらにロッキングの影響を大きくするために軟らかくしたものも用意し,合計4ケースとした。また,比較用に基礎を固定とした試験体も加震した。入力地震動には,告示波と東北地方太平洋沖地震の際に築館で観測された波を用い,弾性時,および試験体に損傷を与えるレベルの2レベルで入力した。入力は,余震を模擬するため,同レベルを2回入力した。その結果,ロッキング回転角およそ±15%,ロッキング回転角が大きくなると±5%程度で計測が可能であることが分かった。また,計測されたその回転角を用いて,建物の性能曲線からロッキングを除去したところ,基礎固定での性能曲線と良好に一致したことから,提案する方法でロッキング挙動を性能曲線から除去することが可能であることが分かった。さらに,ロッキング回転角と転倒モーメントの関係を加速度計のみから精度良く計測することが可能であり,ロッキング挙動の非線形性を判断することも可能であることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画時には、東北地方太平洋沖地震および一連の余震の発生を予想していなかったが,平成24年度も引き続き多くの余震が発生し、ロッキングの挙動評価に必要な、有意なデータ群が多数計測することができた。異なる地震発生地域ごとに、異なる要求曲線の特徴を得ることができた。また、東北地方太平洋沖地震の発生に伴い、さらに実観測建物を2棟増やし、計測を行うことで、建物規模や形式による違いを検討できる可能性が増えた。 多くの実観測記録を得たことにより、建物の応答に与える地盤との相互作用の影響を検討することができ、横浜国立大学建築学棟を参考に、建物基部のロッキング挙動と、それに伴う建物基部での鉛直方向の応答値を検討することができた。更に,その検討結果を用いて,震動台実験の詳細を検討し,建築学棟を模擬した試験体脚部での回転角を発生するようなシステムを作成し,予定通りのスケジュールで震動台実験を終えた。当初計画時に期待していたとおり,本システムで用いる加速度計を用いて,有効に建物脚部の鉛直方向変位を算出することが可能であり,その値を用いて,建物脚部でのロッキング回転角を各時刻で算出可能であることを明らかに出来た。また,その回転角を用いて,従来の方法で算出した性能曲線から,建物脚部での回転角に応じた全体曲げ変形成分を除去する性能曲線を補正する方法が有効であることも確認できた。以上のことから,本研究は当初計画通りに進行していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度に実施した振動台実験により、建物基部に配置した2台の加速度計によりロッキング挙動を計測可能であること、および加速度計のみから作成した建物の性能曲線から、ロッキング振動の影響を除去できることが分かった。しかし、これまでの試験体が鉄骨試験体であったため、非線形履歴が鋼材の構成則となった。一方、本システムの主たる対象構造は鉄筋コンクリート構造としており、その非線形履歴の特徴は、耐力低下のない限り、再載荷時に前の除荷点を通過すること、および終局限界は変形量に依存することである。 そこで、平成25年度では、ロッキング挙動を取り除く対象となる、建物の性能曲線を鉄筋コンクリート造試験体により確認する。通常の振動台実験では、試験体を終局状態に至らしめるために、徐々に入力する地震動レベルを高めながら複数回入力する。しかし、実現象としてはこのように徐々にレベルが増加する地震動が入力することはなく、また、このような加振計画では、非線形性能曲線が分割されてしまう。そこで、平成25年度の振動台実験では、小型鉄筋コンクリート造柱を作成し、鉄筋コンクリート造の錘に緊結した4本柱の1層建物を作成し、本震および余震の2波のみを入力して、加速度計測値から作成する性能曲線の精度検証を行う。この時、想定する本震での損傷(塑性率)をパラメータとし、3ケース程度を実施する。また、余震は最大余震を想定して本震と同一のものを入力する。 また、横浜国立大学建築学棟およびその周辺地盤の実観測を継続して行い、実構造物のロッキング挙動、および建物と地盤の相互作用に伴う入力地震動と周辺地盤の計測地震動との差違を検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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