鉄筋コンクリート造柱部材では、上階の柱部材の主筋が上階の柱部材まで延長されている部材がある。この定着延長筋の現象は土木分野の橋脚などによく見られる軸方向鉄筋の段落とし部の破壊と同じ現象である。本研究で対象としているのは「そもそもその鉄筋がその部材では必要ではない鉄筋である」部材である。必要ではない鉄筋なので、定着は十分とられないが、ある程度働いてしまい、その結果その部材に悪影響を及ぼしていると考えられる。これまで、この被害を再現する実験を行ってきた結果、定着延長筋端部で降伏する場合で、曲げひび割れが斜め50度程度に進展した部材で変形能が低下すること、定着延長筋のカットオフ点が降伏位置の場合、あるいは柱脚が降伏位置でも腰壁を有する場合曲げ強度が低下することがわかった。 新潟県中越沖地震で被災した学校建物の2階の柱は、定着延長筋端部からの斜めひび割れにより変形能が決定したと考えられる。この被災した学校建物を対象として定着延長筋の有無による柱の性能の違いを考慮した複数の解析モデルを作成した。部材の損傷度を地震応答解析によって求められる応答変形からと関連づけて、建物耐震性能残存率を推定した。これを実際の被災度を比較し、定着延長筋を考慮したものがもっとも実被災度に近くなることを示した。
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