研究課題/領域番号 |
23560672
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
藤谷 秀雄 神戸大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (10344011)
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研究分担者 |
向井 洋一 神戸大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (70252616)
佐藤 栄児 独立行政法人防災科学技術研究所, その他部局等, 研究員 (60343761)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | パルス性地震動と長周期地震動 |
研究概要 |
本研究は、免震構造の床応答加速度を上昇させないで、応答変位を低減する制御方法によって、建物の建設地の地震環境に応じて、パルス性地震動と長周期地震動のいずれに対しても適用可能な制御方法を提案することを目的としている。 まず想定すべきパルス性地震動と長周期地震動を選定し、それらの地震動に対する免震構造の要求性能を検討したところ、パッシブ制御に用いられるダンパーの中ではオイルダンパーの有効性が確認できたので、より有効にオイルダンパーを使用する方法を研究した。再現期間500年程度の地震動作用時の機能維持性能を低下させない方法として、オイルダンパーをある境界変位より大きい大変形領域のみで作動させることで床応答加速度を上昇させない可能性が見いだせた。しかしより厳しく変位低減を行うためにはオイルダンパーの量を増やす必要があり、床応答加速が上昇する結果となった。 そこで回転慣性を付加することによって床応答加速度を低減できる可能性を検証した。回転慣性を常時作用させることで、床応答加速度が低減され、境界変位以上でオイルダンパーを稼働させることと併せて、より良好な結果がえられることが明らかになった。そこで回転慣性と粘性抵抗の効果を定量的に評価したところ、回転慣性が大きくなればなるほど応答変位の低減効果が大きいが、床応答加速度が増し、それに粘性抵抗を適度に加えることによってより適切な応答低減が図れることが明らかになった。 さらに粘性抵抗を可変とすることの効果を検証した。磁気粘性流体を使用して粘性抵抗を可変とする可変ダンパーを想定して、セミアクティブ制御を行った。その結果、最適制御で制御力を決定し、スカイフック制御のルールによってセミアクティブ制御を実施することによって、良好な結果が得られることがわかった。これに基づいて、次年度で実施する実験に用いるダンパーの設計を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的における初年度の計画に対して、下記の点で順調に進展していると判断できる。 まずパッシブ制御のダンパーの中ではオイルダンパーの有効性を確認し、オイルダンパーをより有効に使用する方法として、オイルダンパーをある境界変位より大きい大変形領域のみで作動させることと、回転慣性を常時作用させることで、パルス性地震動においても長周期地震動においても、床応答加速度の上昇を防ぎながら応答変位を低減できることが、確認できた。 さらに回転慣性と粘性抵抗の効果を定量的に評価し、粘性抵抗を可変とすることの効果を検証し、磁気粘性流体を使用して粘性抵抗を可変とする可変ダンパーによるスカイフック制御の有効性を導き出した。 これに基づいて、次年度で実施する実験に用いるダンパーの設計を行った。
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今後の研究の推進方策 |
まず平成23年度に設計したセミアクティブ制御装置を製作する。高速加振装置でこの制御装置の性能検証を行い、基本特性を把握する。 次に、免震構造のモデルを数値解析し、セミアクティブ制御装置を加振し、その発生制御力をPCに取り込んで解析を行うリアルタイム・ハイブリッド実験によって、制御の有効性を検証する。免震構造をモデル化することと、得られた制御力を実数倍することにより大規模な制御装置を想定できることから、多様な免震構造の検証が可能である。 最終年度には、免震構造が擁壁に衝突した際のフェイルセーフ設計の研究を行う。制御は万全ではないので、免震層の変形が十分に制御できなかったときは、擁壁に衝突することが考えられる。したがって、擁壁に衝突した際に上部構造に与える損傷を解析で予測し、許容できる損傷の範囲、あるいは損傷によるエネルギー吸収に期待して、免震構造全体の倒壊を防ぐなど、フェイルセーフの考え方を提案する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成23年度に設計したセミアクティブ制御層装置を製作する。専門的技術が必要なので、外注によって実施する。ここに多くの研究費が必要になる。 セミアクティブ制御のリアルタイムハイブリッド実験は、過去の科学研究費で整備された設備で実施するので、多少の試験器整備費と消耗品費の支出で実施可能である。 平成23年度の研究成果を発表する旅費を支出する。
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