研究課題/領域番号 |
23560679
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研究機関 | 芝浦工業大学 |
研究代表者 |
岸田 慎司 芝浦工業大学, 工学部, 准教授 (10322348)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | パイルキャップ / 埋め込み長さ |
研究概要 |
本来ならば実験を行って研究を遂行するはずであったが,東日本大震災が発生したことにより学校建築の調査・まとめに時間がかかってしまい,半年遅れて研究を開始した。まず,現状パイルキャップの設計において問題になっている点を設計事務所等にヒアリング調査を行い,さらに今までに行われた研究成果を顧みることから始めた。そこで,問題となっているのが既製杭の場合は,埋め込み長さとそれに伴う配筋方法である。 パイルキャップ内の応力伝達メカニズムを解明する為に,柱と杭と基礎梁の取り付いた平面ト形の部分骨組試験体を作製して静的正負交番載荷実験を行う。具体的な試験体案としては,実物大の約1/4に縮小したパイルキャップ試験体を設計する。実験変数としては,一つはパイルキャップと基礎梁の位置関係(パイルキャップの拘束高さ:パイルキャップ高さから基礎梁下端から下の部分を除く高さ,1L,1/2L,1/4L [Lはパイルキャップせい]),この場合基礎梁せいおよびパイルキャップせいは一定とする。二つ目はパイルキャップせいは一定として基礎梁の上端の位置を固定してせいを変化させたときのパイルキャップ下端から基礎梁下端までの距離(0,2.5/5L)とすることを考えている。実験によってパイルキャップの力学的挙動を把握する。具体的には,破壊過程を詳細に観察するとともに,主筋,袴筋,ベース筋やせん断補強筋のひずみ,コンクリートの局所的な変形などを詳細に調査する。さらに,接合部の復元力特性を調べることによって,鉄筋量の違いによる変形性能を定量的に把握する。これによって,架構の靭性能を適切に評価できる。以上のように,パイルキャップ内の鉄筋のひずみや破壊性状,復元力特性などの成果を配筋方法提案のための基礎資料としてまとめる。 現在試験体の組み立てを行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
震災の影響により,研究活動の着手が遅れ,昨年の実験計画を持ち越したために遅れている。しかし,現在,試験体を製作しており,加力自体も8月までに終わる計画である。実験終了後,直ちに有限要素法解析を実施する。ので,今年度終了時までには当初の予定通りに終えることができると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
実験結果をもとに,三次元非線形有限要素法解析によるパラメトリック解析を実施する。現状のパイルキャップ内部に配筋されている袴筋およびベース筋は剛性を確保する目的に使われているが,強度および変形性能を考慮した場合,実際には過剰配筋であると考え,せん断抵抗機構を考えることにより補強筋としての役割を果たせるはずである。そこで,補強効果を定量的に評価する為に三次元非線形有限要素法解析によるパラメトリック解析を実施する。申請者らの既往の解析により,解析結果の破壊性状や剛性,各種ひび割れ強度と実験結果との妥当性が示されており,それらの研究を参考にし,各種鉄筋を立体的にモデル化する。申請者らの既往の実験結果によって,袴筋やベース筋に貼付したひずみゲージにより局所的な応力状態を把握しているので,内部に生じるせん断応力度分布など多変数解析も視野に入れ,簡易な配筋方法を検討したい。三次元非線形有限要素法解析には現有のDIANA9を使用する。 この解析による成果と前年度の実験による成果とを合わせて,パイルキャップ内の応力伝達メカニズムを提案することを試みる。さらに,性能評価型の次世代耐震設計法の原案を作成する。この耐震設計法の原案の妥当性を検証する為に,パイルキャップ内の各種鉄筋量を合理的にした試験体2体を設計して正負交番載荷する静的実験を行う。試験体の寸法,測定項目等は前年度と同じである。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成23年度の経費が残ってしまったのは,震災の影響により研究活動の着手が遅れてしまい,実験自体が遅れていることによる。平成24年度に得られた結果をもとに,性能評価型の次世代耐震設計法の原案を適宜修正して,最終案を提示する。その有効性を再検証するために,柱と杭と基礎梁の取り付いた平面ト形の部分骨組試験体1体を作製して実験する。 本研究で実験したト形部分架構試験体(計13体)の成果に申請者の既往の実験研究の成果を重ね合わせながら,前年度までに検討したパイルキャップの簡易配筋法の評価結果も考慮して,複数本杭のあるパイルキャップを包括する立体的な破壊モデルを表現できるマクロ・モデルを構築し,パイルキャップ破壊強度および変形性能を定量的に評価する。ここでは,ストラット・タイモデル等を使用してパイルキャップのせん断強度を求めることを試みる。以上の研究で得られたパイルキャップ内の各種鉄筋の応力状態を実験と解析から明らかにし,配筋の簡略化と断面の縮小化を定量的に評価し,パイルキャップの性能評価型の次世代耐震設計法を策定する。さらに,3年間の結果を取りまとめ,成果の発表を行う。
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