研究課題/領域番号 |
23560682
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
輿石 直幸 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (00257213)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 建築構造・材料 / 建築工法 / 小舞壁 / 左官材料 / 壁土 |
研究概要 |
本研究は、環境負荷のきわめて少ない伝統的な小舞土壁構法の再興を目指し、土壁の性能向上を可能とする材料・工法の基本原理を構築することを目的とする。当該年度に行った研究を以下のIおよびIIに示す。I.荒壁と中塗りそれぞれが具備すべき性質に対して、様々な調合因子が及ぼす影響を明らかにした。 荒壁は、小舞下地を挟んで表裏が一体化することが求められる。また、土壁が水平力を受けた際の抵抗要素として力学的性質が重要であると考えられる。そこで、原土の種類、藁スサ混入率の異なる12種類の壁土を用いて、小舞下地に荒壁土を塗付けて乾燥させた試験体を切り出し、表裏の一体性を観察した。また力学的性質として圧縮試験を行った。その結果、(1)原土の種類が異なると表裏の一体性にかなりの差が生じること、(2)スサ混入率が増すと圧縮強度は低下するが圧縮試験における靭性は向上することが分かった。 中塗りは、薄い上塗りを可能とするため、ひび割れがなく平坦な表面が求められる。また、土壁が水平力を受けると、荒壁とともに中塗りもせん断力を負担することが分かっており、中塗りの具備すべき性質として力学的性質も重要であると考えられる。そこで、中塗りのひび割れ性状および圧縮強度の測定を、壁土の粒度、藁スサ混入率および藁スサの種類の異なる33種類の壁土を用いて行った。その結果、ひび割れが発生せず、圧縮強度が高い壁土を調合するためには、(1)藁スサはひび割れ抑制に必要な最低限の量にすること、(2)藁スサは小さいものの方が良いこと、を明らかにした。II.実大の土壁を小型化した試験体を用いて構造実験を行った。今後、本実験の結果を分析し、土壁の構造耐力に影響を及ぼす材料特性を明らかにする。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究を遂行するうちに、土壁の構造耐力と関係する材料特性を明らかにする必要があると分かった。そのために必要な構造実験に時間を割いた。当該年度は、塗付け各層の性質に対する影響因子を明確にする予定であったが、不十分な部分があり次年度も継続して行う必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
構造実験の結果を分析し、土壁の構造耐力に影響を及ぼす材料特性を明らかにする。また、塗付け各層の性質に対する影響因子の明確化のための実験およびヒアリング調査を行う。これらと並行し、次年度予定していた壁土の調合手法の考案を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
当該年度はヒアリング調査の件数が予定より少なくなったため次年度に繰り越す研究費が生じた。これは次年度に追加で行うヒアリング調査で使用する予定である。また、当該年度から継続して行う実験があるが、必要備品は購入済みであるため、当初の配当額で研究の遂行が可能である。
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