本研究は、環境負荷の少ない伝統的な小舞土壁構法の再興を目指し、土壁の性能向上を可能とする材料・工法の基本原理を構築することを目的とする。最終年度は、これまでに明らかにした小舞土壁の水平力に対する4つの抵抗要素の力学特性に対して、各種の因子の及ぼす影響を明らかにすることを目的とした。 4つの抵抗要素をそれぞれ模擬した要素試験体を用いて、対角を加力するせん断実験を行った。試験体の木製加力フレームの接合部はピン接合とし、フレームの内側の300mm角の部分に小舞下地、荒壁層および中塗層を施した。 検討した要因は、間渡竹端部と欠き込み穴のゆるみの有無、荒壁土および中塗土の調合、ならびに壁厚70mm内の荒壁層と中塗層の層厚比である。なお、荒壁土および中塗土は、初年度に行った材料実験の結果をもとに、弾性係数・圧縮強度の大きい調合と、吸収エネルギーの大きい調合をそれぞれ2種類用いた。 結果を総括すると、隅角部周辺においては、微小変形時にはちりすきの小さい中塗層が主に抵抗するため、中塗土に弾性係数・圧縮強度の大きい調合を用いた場合や、中塗層の層厚比の大きい場合に、微小変形時の荷重-変形関係の傾きは大きくなることがわかった。その後、荒壁層の隅角部が抵抗すると、荒壁土に吸収エネルギーの大きい調合を用いた場合や、荒壁層の層厚比の大きい場合に、荷重は大きくなることが明らかとなった。貫周辺においては、荒壁土に吸収エネルギーの大きい調合を用いた場合に荷重は大きくなる傾向にあった。間渡竹は、軸組に設けた欠き込みとのゆるみの有無によって抵抗を開始する変形角が異なるが、ゆるみの有るほうが荷重は大きい傾向にあることがわかった。 以上より、各種要因の違いによる荷重-変形曲線および破壊性状に現れる違いが明らかとなり、初期剛性および靭性について、それぞれの向上に有効な条件を整理することができた。
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