超高層鉄筋コンクリート造建物において、最近、建物の中央部に重要な耐震要素としてコア壁を配した構造が増加しており、今後、本構造建物は、より一層増加していくと考えられる。しかし、現在のところ、コア壁を施工するにあたり、フルプレキャスト化は全く図られていない。本構造の今後の発展の為にはフルプレキャスト化は不可欠であるが、フルプレキャスト化した場合の構造性能は不明であり、構造性能の解明、設計法提案を本研究の目的としている。 本年度は研究の3年目(最終年度)にあたり、1、2年目におけるフルプレキャストコア壁の水平加力実験に引き続き、それらと比較検討するための一体打ち試験体による水平加力実験を実施した。実験としては、RC造コア壁の構造性能を検討するため、コア壁の圧縮端部近傍を模擬した一体打ち壁柱試験体1体による水平加力実験を行った。昨年度までの実験においては、フルプレキャスト化の可能性が開けたものの、それと同等の形状、配筋をもつ一体打ちの場合との構造性能の差は明らかでなかった。そこで本年度は、昨年度までのフルプレキャストコア壁と同等の形状、配筋の試験体を計画した。昨年度までの壁柱のプレキャスト化は、壁柱を柱形に分割し、柱部材間の接合面には接合筋を配筋せず、コッターを設けグラウトを充填する方法であった。柱部材間の接合を目的とした配筋として、水平つなぎ筋を集中配筋した。本年度は、フルプレキャストコア壁における主筋及び帯筋は同配筋とし、水平つなぎ筋に代わりに横筋を配筋した。 実験の結果、耐力は既往の耐力式による計算値に対し1.1~1.3となった。フルプレキャスト試験体では、同比率が1程度であったので、フルプレキャストの方がやや小さい結果となった。本研究で用いたフルプレキャスト化の方法により、一体打ちと同程度の構造性能をもつコア壁の設計、施工の可能性が明らかになったといえる。
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