研究課題/領域番号 |
23560684
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研究機関 | 大阪工業大学 |
研究代表者 |
西村 泰志 大阪工業大学, 工学部, 教授 (10102998)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | S部材 / RC部材 / 切替え部 / 孔あき鋼板ジベル / 応力伝達機構 / 抵抗機構 / 耐力評価法 |
研究概要 |
平成23年度は,S部材とRC部材で構成される切替え部に関して,S部材フランジに設けられた円孔および円孔に挿入された鉄筋が,切替え部の破壊性状にどのような影響をおよぼすか実験的および理論的に検討した. 計画された試験体は,切替え部を有する部材長1,200 mmの片持梁形式である.RC断面は350×500 mm,S部材の公称寸法はH-300×150×12×19である.RC部材に埋め込まれるS部材の長さは450 mmである.実験変数は,S部材フランジ部の円孔および挿入鉄筋の有無である.計画された試験体は,S部材フランジの片面に直径40mmの円孔を10個ずつ計20個設けた試験体,S部材フランジに20個の円孔を設け,円孔に挿入鉄筋 ( D13) を設置した試験体および円孔を設けていない試験体の計3体である.実験は,S部材上端部に水平力を正負漸増繰返し載荷した.各試験体,エネルギー吸収能力の小さい逆S字形の履歴性状を示し,円孔および挿入鉄筋を設けることによる履歴性状の改善は見られないが,円孔および挿入鉄筋を設けることによって,最大耐力の顕著な増大が観察された.これらの結果から,円孔に充填されたコンクリートは載荷初期の段階でその効果を発揮し,最大耐力以後その効果はほとんど見られない.円孔に充填されたコンクリートのせん断強度は,コンクリート圧縮強度の0.3倍程度である.一方,挿入鉄筋は充填されたコンクリートの効果が減衰した後,ダボ効果により耐力を向上させる効果を有している.挿入鉄筋のせん断強度は,挿入鉄筋の降伏せん断強度の0.6倍程度である. 研究代表者の既往の研究によって提案された切替え部の応力伝達機構および抵抗機構に基づいて,円孔に充填されたコンクリートおよび挿入鉄筋の効果を加味した耐力評価法を提案した.本耐力評価法によって,計算値は実験値を概ね評価できることを明らかにした.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度,3体の片持梁形式の試験体によって,フランジに円孔を有する切替え部の性能を実験的に検討し,(1) 円孔に充填されたコンクリートは載荷初期の段階でその効果を発揮し,最大耐力以後その効果はほとんど見られないこと,また,円孔に充填されたコンクリートのせん断強度は,コンクリート圧縮強度の0.3倍程度であること,(2) 挿入鉄筋は充填されたコンクリートの効果が減衰した後,ダボ効果により耐力を向上させる効果を有すること,また,挿入鉄筋のせん断強度は,挿入鉄筋の降伏せん断強度の0.6倍程度であること等の客観的なデータを収集することができた。また,研究代表者の既往の研究によって提案された切替え部の応力伝達機構および抵抗機構に基づいて,円孔に充填されたコンクリートおよび挿入鉄筋の効果を加味した耐力評価法を提案し,本耐力評価法によって,計算値は実験値を概ね評価できることを明らかにした.これらの成果から,フランジに円孔を有する切替え部の効果を加味した設計法を提示するめどが明らかとなった.
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今後の研究の推進方策 |
平成 24 年度は,孔あき鋼板ジベルを取り付けたS 部材とRC 部材で構成される柱梁接合部を対象とする. 実験的研究では,試験体は、S部材がRC部材を貫通する十字形部分骨組とする。RC部材は350×350 mm、梁部材はH-300×125×9×25である。支圧板厚 ( face bearing plate ) は12mmとする。なお、柱梁接合部がせん断破壊しないよう鉄骨ウェブパネル厚は16mmとする。実験変数は、孔あき鋼板ジベルの有無および孔あき鋼板ジベルの配置方向である。孔あき鋼板ジベルの配置方向は、S部材の材軸に鉛直に取り付けたもの ( 鉛直タイプ ) およびS部材の材軸に平行に取り付けたもの( 水平タイプ )の2種類である。これらの実験変数の組み合わせによって、計4体の試験体を計画する。なお、孔径は50φとする。実験は、柱の両端を単純支持し、所定の一定軸力を負荷した後、S部材端部に逆対称荷重を負荷する。 解析的研究では,研究代表者が提案した既往の柱梁接合部の応力伝達機構および抵抗機構に基づいて、孔あき鋼板ジベルの効果を加味した力学モデルを提示し,耐力評価法を提案する。 平成 25 年度は,平成 23 年度および平成 24 年度の成果を踏まえ、孔あき鋼板ジベルを有する切替え部および柱梁接合部の合理的な設計法を提示する。
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次年度の研究費の使用計画 |
当機関の八幡工学実験場・構造実験センターには、実物大の部材、部分骨組および骨組に載荷可能な載荷装置が設置されている。また、データロガー、スイッチボックス等測定装置が設置されている。したがって、申請経費の大半は、試験体製作費 ( 電気抵抗線ひずみゲージを含む)、載荷治具の製作費、実験データ保存のための消耗品費 ( USB メモリーデータスティク等 )、実験補助者への謝金および載荷装置組み立て等の費用である。計画する試験体は、研究の目的を達成するための各種要因を変数とする必要不可欠な試験体数を考えている。なお、次年度使用額が生じたが、平成23年度に用いた鉄骨試験体の寸法を実験変数の効果を明確にできる耐力の関係から、当初の計画より若干小さ目としたため試験体製作費が当初の計画よりも少なくなったためである。一方、平成24年度では、試験体の耐力の関係から、当初の試験体寸法を若干大きくする予定である。したがって、本計画では、次年度使用額を加味した使用計画としている。旅費として、成果発表のための費用を計上した。また、その他として、報告書の印刷費および本研究成果の学術論文への投稿費を計上した。
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