研究課題/領域番号 |
23560693
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
斎藤 輝幸 名古屋大学, 環境学研究科, 准教授 (30281067)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 全熱交換器 / 熱交換効率 / エンタルピー交換効率 / 外気負荷 / 内外温度差 / 期間性能 |
研究概要 |
近年、ビル用マルチエアコンをはじめとした個別分散空調システムの採用が増加しているが、執務空間への直接的な外気導入が室内環境やエネルギー効率に及ぼす影響については、必ずしも十分な検討がなされているとは言えない。そのため、主要な外気導入手法の1つである全熱交換器を用いた換気によって室内環境の悪化やエネルギー効率の低下が生じている可能性があり、より総合的な視点から設計・制御に寄与する検討を行うことが必要である。そこで本研究は、単に機器単体の評価を行うだけでなく、全熱交換器からの吹出し気流による室内環境への影響も含めた年間を通した総合的な全熱交換器の性能評価法の開発を目的としている。平成23年度は、過去に実施したオフィスでの温湿度環境の長期実測調査データを再分析するとともに、不足データを補うため、8月以降、学内の事務室とPC室において全熱交換器の性能評価を目的とした新たな実測調査を開始した。この実測調査により、夏期における熱交換効率は内外温度差が十分あるときに50~60%、冬期は80%程度で安定しており、特に冬期は仕様値を満足しやすいことを確認した。また、夏期において内外温度差が2~3℃程度の場合、熱交換効率は低い値を示すもののファン発熱分を低減する程度の効果は見込めることや、秋期において内外温度差が7℃程度以上あると外気負荷低減効果が見込めることを確認した。エンタルピー交換効率についても夏期が60%、秋期や冬期が80%程度であり、適切な運転を行えば、普通換気時に比較して60~80%程度の外気負荷削減効果があることを実測データに基づき試算した。また、所有する実験室に全熱交換器を設置し、初期試験を実施した。より詳細な条件下におけるデータの蓄積およびその分析は平成24年度に行う予定であるが、これらの蓄積により、年間を通した性能評価法の基礎を築くことが可能となる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究は、年間を通した総合的な全熱交換器の性能評価法の開発を目的としている。この研究目的に対して、本研究ではまず過去の実測データの分析と新たな実測調査によるデータ収集を行った。この実測調査は平成23年8月から開始しており、1年間にわたって継続する予定である。また、実験室における性能評価試験も初期試験を行った段階であり、評価対象機種を増加させた検討は次年度以降に実施する予定である。これら実使用状態における年間データと実験室における種々の条件下における計測データがそろえば、年間性能評価法の検討を大きく前進させることができると考えられるが、現時点ではまだ詳細なデータ分析に至っておらず、若干遅れ気味である。
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今後の研究の推進方策 |
詳細なデータ分析は遅れ気味ではあるが、今後も実測調査を継続するとともに、当初の研究計画どおり実験室において評価対象機種を増やした試験を集中的に行う予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成23年度に購入した風量測定器がモデルチェンジに伴って当初見積より低価格化され、研究費に若干の余裕が生じた。それを受けて高精度温湿度センサーを追加発注したものの、その納入が年度内に間に合わず、結果的に次年度使用額が生じることとなった。平成24年度は実験室での評価試験における対象機種を増やすため、複数の全熱交換器を購入、設置する必要がある。また、室内における気流分布状況を把握するため、超音波風速計を購入する予定である。
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