平成23年度は、実際の居室に設置された全熱交換器を対象に日常環境下での実測調査を実施し、内外温湿度差の変化による熱交換性能への影響を把握した。平成24年度は実験室において統一した条件下での特性把握を行うとともに、得られた特性を用いて外気温の日変化を考慮した場合の換気負荷削減効果について検討した。また、吹出し気流による室内への影響を調査し、気流制御板によるドラフト低減効果を確認した。 平成25年度は、実験室において複数の全熱交換器に対する特性把握実験を追加し、夏期や冬期に加えて中間期を想定した条件下での性能把握を行い、外気温の日変化および季節変化を考慮した場合の換気負荷削減効果について検討した。また、熱交換素子付近での評価とともにダクト末端部での評価を行うため、ファン発熱の影響とダクト部分での熱漏洩の定量化を行った。ダクト末端部での熱交換効率は、熱交換素子自体の効率に比べて20%ほど低くなる場合があるものの、ダクト部分の影響を含めた代表月の全熱回収熱量は普通換気時の換気負荷に対して各季節とも60~65%となることを把握した。さらに、全熱交換器を経由した給気による室内の温度分布および気流分布への影響についても、夏期・中間期・冬期のそれぞれについて検討し、夏期及び冬期では吹き出し口に取り付けた気流制御板とエアコン室内機からの吹き出し気流による複合的な影響を確認した。 全熱交換器の熱交換性能と室内環境への影響について一定の成果を得たものの、より一般化した関係を示すには室内環境への影響をさらに詳細に検討する必要があり、今後も研究を継続して設計指針としての提示を目指すこととする。
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