研究課題/領域番号 |
23560696
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
長谷川 麻子 熊本大学, 自然科学研究科, 助教 (80347004)
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研究分担者 |
戸田 敬 熊本大学, 自然科学研究科, 教授 (90264275)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 室内空気質 / 内装材料 / 化学物質 / 濃度低減 / 吸着 |
研究概要 |
本研究では、壁装材料の化学物質に対する低減性能について、短期間で安価に評価できる試験装置の開発を目的としている。本年度は、試験装置を新たに設計・組立、その実用性について硫化水素(H2S)を用いた実験を行った。今年度新たに設計した試験装置は、流路はすべてSUSおよびPTFEのチューブで接続しており、除去対象とする汚染ガスをボンベから圧送、清浄空気を用いて所定の濃度まで希釈し、経路の最下流に設置したエアポンプにより吸引、マスフローコントローラーにより流量を一定に維持できるようになっている。この経路の途中に、壁装材料を施工したチャネルを接続し、チャネル内を通過した空気中の汚染物質濃度を分析機器で計測することにより、壁装材料の化学物質低減性能が得られる仕組みである。建材を設置するチャネルは塩化ビニル製で、上中下3枚の板で構成される。上板にはガス流路と接続する出・入口を設け、中板にはガス流路となる空洞部があり、これらを組合せてネジとナットで締め密閉、材料表面を汚染ガスが通過するようにした。除去対象となる汚染ガスとして、今年度は、リモナイトの脱臭性能に関する既往の研究で用いてきたH2Sを採用し、チャネル入口濃度を50ppbとして、本試験装置が正常に稼働するかどうかを確認した。実験対象とした壁装材料は、漆喰および珪藻土、乾式工法で化学物質低減性能をうたっている熊本県産い草を原料とした和紙クロス2種であり、比較対象として、建材ではないものの悪臭成分であるH2Sを低減できることが既に判明しているリモナイトと、一般的に使用されてきたビニルクロスを採用した。これらの実験結果から、今回新たに設計・製作した試験装置によって、内装材料の化学物質低減性能が容易に判断できることがわかり、さらに、珪藻土はH2Sの低減性能を有する可能性があることと、乾式工法ではH2Sを低減することができないことが判明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
試験装置の開発と吸着性能試験を目標としていたので、本年度はほぼ計画通りに進展した。また、日本建築学会九州支部での発表も行い、次年度の同学会全国大会の発表論文としても、年度内に投稿を終えることができた。しかしながら、試験装置のガス圧送システム部分の組立と動作確認に予想以上の時間を要したため、硫化水素以外のガスについて試験を行うことができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
試験装置のガスライン接続については、本年度の作業で学んだことができたので、次年度新たに組み立てる装置を本年度より早めに稼働させることができれば、次年度以降の研究推進がスムーズになると考えている。ただ、ドイツ研究機関との連携については、先方の経済的および人材的理由で断念せざるを得ないことになったので、当方でできる限り研究目標を達成できるように努力する所存である。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度は、実験場の変更に伴い、新たに試験装置の組立が必要であり、また、ガス圧送システム改善のために、マスフローコントローラーを追加発注、配管・接続部の更新など、試験装置の部品購入が大半になると予想している。また、本年度の研究成果を国内外の諸学会で発表するため、一部は旅費として使用する計画である。
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