日本では、住宅の壁装仕上げ材料としてビニルクロスが一般的であるが、シックハウス症候群などの室内空気汚染による健康影響が問題となった頃から、空気中の化学物質を低減するという建材が登場し、少量ながら市場に流通している。このようないわゆる機能性建材の化学物質に対する低減性能は、日本工業規格(JIS)で定められた試験方法によって得られるが、それに供する前に、製品開発の時点で性能評価を行うことは難しい。 そこで本研究は、内装仕上げ材料の化学物質低減性能について、短期間で安価に評価できる試験装置の開発を目的としている。本法は、建材を設置した小型の空気チャネルに試験ガスを層流で導入し、チャネルデバイスの前後におけるガス濃度の減少を調べることに基づいている。熊本県産のい草和紙や阿蘇周辺で採取できる「リモナイト」をはじめ、複数種の内装材料を対象に、ガス状汚染物質としては硫化水素(H2S)およびホルムアルデヒド(HCHO)を採用し、独自に開発した試験装置による実験を行い、簡易試験装置としての実用性について検討した。 結果から、独自に開発した試験装置および方法により、壁装材料の化学物質に対する濃度低減性能について、初期性能のみ有する物理吸着の材料と、定常的に性能を発揮する化学吸着・分解タイプの材料とが判別できた。また、物理吸着による材料の低減性能について定量評価することができた一方で、これらの材料については再放散の可能性が示唆された。さらに、定常的な低減性能を有する材料については、除去率-流量特性が把握できた。
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