研究課題/領域番号 |
23560697
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研究機関 | 秋田県立大学 |
研究代表者 |
松本 真一 秋田県立大学, システム科学技術学部, 教授 (70209633)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 住宅設計 / 環境配慮デザイン / パッシブ暖冷房 / 地域気候特性 / 気候区分図 / 震災復興住宅 |
研究概要 |
本年度の研究実施計画は、以下の通りであった。1. 「(既提案)パッシブ暖冷房のための気候区分図」の改良」:申請者らは既に、「パッシブ暖冷房のための気候区分図」を提案する研究を進めてきた。この提案には、(1)自然エネルギーの利用手法の分類と選択、(2)その手法の地域ごとのポテンシャルと必要度の指標化、(3)これら2種の指標を総合したデザイン指標の提案、(4)類似地点のクラスター分析による区分図の作成というプロセスが含まれるが、(2)における必要度指標があまり定量的とは言えないところが課題である。この点を再検討し、マップを改良する。この研究過程から得られる知見を後で「環境配慮デザインの方法論」に敷衍する。2.「(改良版)気候区分図」の「環境配慮デザイン手法適用区分図」への展開:1.(1)の手法の分類と選択を「環境配慮デザイン手法」全般に拡大する。従来、「パッシブ暖房」、「通風」、「夜間冷気導入」、「夜間放射冷却」、「蒸発冷却」、「地中冷熱」を考慮したが、これに、「遮熱」、「日射遮蔽」、「断熱」、「気密」、「太陽光発電」、「風力発電」、「自然採光」、「雨水利用」などの項目を追加することになる。その上で、1.(2)~(5)のプロセスを適用して、新たな区分図の作成を試みる。 当初は、1と2の実施計画の柱に従い、全国的な環境配慮デザイン手法適用区分図の作成を最終目標と設定していたが、東日本大震災の発生に伴い、その復興支援の一環として、被災3県(岩手、宮城、福島)における震災復興住宅の設計に資する環境配慮デザイン手法適用区分図を作成・提案することに目標を再設定し、対象地域を絞り込むことにした。研究の結果、1と2に掲げた実施計画は概ね達成され、震災復興住宅の環境設計用の地域区分図を提案することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績の概要に記した通り、当初、全国規模での展開を予定していた対象を東日本大震災で被災した3県(岩手、宮城、福島)への展開に縮小したことは、計画に対する達成度という観点からはネガティブに捉えられるかも知れないが、このことは研究の推進に対する強い動機となり、予定の範囲外であった「雪対策」、「凍結対策」などの観点も加味した気候区分図を提案することができたことはプラスであり、トータルとしてはほぼ順調と言える。
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今後の研究の推進方策 |
次年度以降の実施計画は以下の2’~6の通りである。特に24年度は特に3と4に取り組むが、本年度の計画変更に伴い、2’の実施を前提とする。2’: 「(全国規模の)環境配慮デザイン手法適用区分図」の作成:本年度作成した区分図を全国規模に拡大する。3.デザイン手法適用区分図」の作成論理に基づく「環境配慮デザインの方法論」の構築:本年度研究実績の概要の2として記した区分図の作成にて適用した論理を整理し(エネルギーまたは炭酸ガス排出量換算)、平易で明解な「環境配慮デザインの方法論」として記述する。方法論は、概略、(1)各種手法のポテンシャルや効果をエネルギーや炭酸ガス排出量に換算して表示する一貫した指標を提示する。(2)地域によって異なるプロトタイプの住宅モデルを想定し、各種手法の必要度を指標で表す。(3)(1)と(2)の指標から最終的な評価指標を構築し、地域の気候特性を環境配慮手法の有用性という形で定量的に把握できるようにする。(4)(3)に応じた環境設計を行い、シミュレーションを援用して最適化する。という流れになる。4.「環境配慮デザインの方法論」実践のための「分析ツール群」等の開発:特定の手法が地域ごとに評価できる一連の分析ツールを作成し、設計者の判断材料として提供する。また、既開発の住宅用熱負荷計算プログラムを、デザイン手法の総合的最適設計ツールとして使えるよう、エネルギー消費量や炭酸ガス排出量の予測評価が可能なものに改造する。5.「環境配慮デザインの方法論」に基づく設計資料の作成:いくつかの地点に対する例題を準備し、3と4の研究成果の適用過程、結果を説明する資料を作成する。また、環境設計の基礎となる図版やマップを作成し、資料として整備する。6.「環境配慮デザインの方法論」、「分析ツール群」および設計資料の公開準備:研究成果を取りまとめ、ネットワークサーバーを構築して、成果の発信を試みる。
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次年度の研究費の使用計画 |
上記の通り、次年度は、分析ツール群の開発や数値シミュレーションの実施を予定しているため、(1)プログラム開発言語およびライブラリーパッケージを要する。また、本年度は、研究の過程で派生する解析・変換・加工データなどが膨大となり、効率のよい作業を必要とするため、(2)統計分析ソフトウェアや画像処理ソフトウェア、(3)ハードディスクドライブなどの大規模記録媒体を要する。このため、研究費は主として、(1)~(3)の導入に充てる予定である。
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