研究課題/領域番号 |
23560699
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研究機関 | 北九州市立大学 |
研究代表者 |
白石 靖幸 北九州市立大学, 国際環境工学部, 准教授 (50302633)
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研究分担者 |
伊香賀 俊治 慶應義塾大学, 理工学部, 教授 (30302631)
星 旦二 首都大学東京, 都市環境科学研究科, 教授 (00190190)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | アンケート調査 / 共分散構造分析 / 時間的先行性 / 交差遅れ効果モデル / 同時効果モデル |
研究概要 |
先行研究として、2009年に北九州市八枝地区にて実施したアンケート調査(以下、初回調査)の結果から構造方程式モデリング(SEM)を用いて「住宅・地域環境」と「健康」の関連とその影響度を定量的に示し、住宅・地域環境における居住者の健康形成構造をモデル化した。しかし、同調査は対象者を一区域に限定した断面調査であり、変数間の時間的な前後関係(時間的先行性)に関して検討の余地が残されており、因果関係を明確に結論付けるまでに至っていない。そこで2011年度は、同対象地域において追跡調査を実施し、得られた縦断データを用いることで、「時間的先行性」の考慮に基づく住宅・地域環境の健康形成構造に関する検討を行った。初回調査の回答者の一部を対象に、2011年に健康、住宅・地域環境に関する追跡調査を行った。配布した調査票276部のうち、有効回収サンプルは201(72.8%)であった。2時点の縦断データを用いて、SEMにおける「交差遅れ効果モデル」及び「同時効果モデル」による因果関係の推定を行った。得られた知見は以下の通りである。まず、住宅・地域環境因子間の関係性として、『社会支援環境』と『室内住環境』において強い関係性が明らかとなった。次に、健康因子間の関係性については、強い関係性ではないものの、『精神的健康』→『身体的健康』→『社会的健康』という向きの関係が示唆された。これは星らの示す既往研究の結果と同様の結果であった。最後に、健康と住宅・地域環境因子間の関係性については、「近所付き合い」や「地域活動」から成る『社会支援環境』が『精神的健康』に影響を及ぼす可能性が示唆された。よって、住宅・地域環境が居住者の健康に対して統計的有意な影響(因果関係)を有することが明らかとなり、居住者の健康維持増進にとって住環境の適切な整備が重要であることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2011年度に予定していた追跡調査(健康アンケート調査、健康規定要因の抽出)や地域環境の統計情報収集に関しては、予定通り順調に行っている。ただし、物理環境調査の一環として予定していた住宅・地域環境の長期実測調査に関しては、居住者の承諾が得られなかったため、実施に至っていない。しかし、代わりに2012年度以降に実施予定としていた健康形成要因構造の解明の項目(交差遅れ効果モデルによる影響評価や各種健康症状における健康形成要因構造の解明)に関しては、「研究実績の概要」にて示した通り、今年度既に実施をしている。よって、現在までの達成度は、おおむね順調に進展しているとの評価に至った。
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今後の研究の推進方策 |
物理環境調査の一環として予定していた住宅・地域環境の長期実測調査の実施が困難となった点、また2011年度に実施したアンケート調査結果に関して、データの経年変化非常に大きく現れた点等を勘案し、2012年度に再度追跡調査を実施し、調査データの信頼性を確保する。よってまず、2011年-2012年の2時点のデータを用いて、交差遅れ効果モデル及び同時効果モデルによる再分析を試みる。また、新たに3時点データの分析方法として、マルチレベル分析を行い、個人の健康影響と住宅・地域環境の健康影響を分離した分析を行う。特に前述の2011年の調査時に誤差要因として考えられた経年変化(個人の影響)を除去し、住宅・地域環境の健康影響に着目した分析を行う。2012年度のアンケート調査の詳細としては、2011年の調査時に協力意志が得られている201名を対象とする。調査票は、前回調査の居住者の健康状態・ライフスタイルに関する設問と住宅・地域環境に関する設問に住環境の変遷に関する設問を加えた構成とする。調査票配布にあたっては北九州市関連部局との連携・協議が必要であるため、過去の調査で連携経験のある白石が担当する。尚、調査の実施は平成24年9月を予定している。
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次年度の研究費の使用計画 |
2012年度に実施するアンケート調査では、調査票印刷及び発送費用、回答謝礼として50万円程度、マルチレベル分析を実施するにあたり、統計分析ソフトIBM SPSS Statistics メディカルモデルの購入費用30万円、更には共同研究者との研究打ち合わせ旅費として30万円(年3回を予定)、本研究成果に関する学会発表とを行うにあたり20万円(国内発表3回程度)が必要となる。ただし、本年度の予算では足りないため、別途予算を確保する予定である。本研究費からは、アンケート調査費用の一部として30万円、統計分析ソフト購入費用として30万円、研究打ち合わせ旅費の一部として20万円を支出予定である。
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