研究課題/領域番号 |
23560700
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研究機関 | 日本工業大学 |
研究代表者 |
成田 健一 日本工業大学, 工学部, 教授 (20189210)
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研究分担者 |
菅原 広史 防衛大学校, 地球海洋学科, 准教授 (60531788)
三坂 育正 日本工業大学, 工学部, 教授 (30416622)
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キーワード | ヒートアイランド / 微気候 / 緑地 / 冷気流 / 放射冷却 |
研究概要 |
最終年度は、当初から計画として盛り込まれていた「国分寺崖線」沿いの緑地を対象に実測を継続した。測定期間は8月2日~9月30日、測定場所は東京都世田谷区内の斜面緑地、成城四丁目緑地・成城みつ池緑地・成城三丁目緑地・大蔵緑地・岡本静嘉堂緑地・上野毛自然公園の6箇所である。緑地の規模は様々であるが、比高はいずれも約20mである。なお、初年度に予備的な実測を行った成城四丁目と野川緑地の結果を踏まえ、国分寺崖線下を流れる野川沿いの冷気と隣接する斜面緑地からの冷気との関連性を明確にするため、川沿いの野川緑地・きたみふれあい広場の2箇所についても実測を行った。 晴天・静穏日には、斜面緑地の下端部では日没後すぐに斜面を下る気流と気温の低下が観測され、斜面緑地での冷気の生成が認められる。一方、川沿いの緑地では、それから数時間遅れて、より明確な気温低下が起こり、斜面の下端よりも低温となる。このとき、川沿いの風向は、下流に向かう方向に急変していることから、河川に沿って上流から冷気が流下してきたことによる変化と判断される。すなわち、川沿いの冷気は、上流からの移流によるもので、隣接する斜面緑地で生成された冷気が到達しているわけではない。 今回対象とした6箇所の斜面緑地のすべてで冷気流出は認められたが、出現の頻度・継続時間・気温低下量には緑地によって差異があった。基本的には緑地の規模に依存する傾向があり、特に斜面の上端部に斜面緑地と連続する平坦な緑地をどれだけ有しているかが、冷気生成量に影響していると思われる。 以上の最終年度の成果も踏まえて研究期間全体の成果をまとめると、小規模の緑地でも冷気生成は認められるが、明確な冷気流出が起こるには緑地幅は最低でも100mは必要で、200m以上の緑地幅があればほぼ確実に冷気流出が起こるといえる。数十m規模で残存する斜面部分の小緑地の冷気流出効果は限定的なものである。
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