研究課題/領域番号 |
23560702
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
佐々木 文夫 東京理科大学, 工学部, 教授 (80385533)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | ノイズの分離 / 位置の特定 / ウェーブレット / 時間ー周波数 / BSS |
研究概要 |
初めに、ノイズと音声信号の位置がまったくわからない状態において、ノイズに完全に埋もれた音声信号に対して、観測信号からノイズと音声信号を100%完全に分離し、かつノイズの位置と音声信号の位置を特定する数学的手法の開発を行った。 本手法は、ブラインド信号源分離の手法を、時間ー周波数領域で用いているため、演算時間が非常に多くかかり、実用性という意味では、やや問題がある。しかし、今のところ単純なモデルに関しては、もっとも演算時間を有する部分の定式化を巧妙な手法で、従来考えていた方法よりも数百倍早く解析できる手法の定式化も行った。本年は、これらの定式化の解析コードを作成し、さらに簡易モデルでの数値実験を行い、離散化の誤差を除けば、100%ノイズの分離・除去が可能であることを明らかにした。さらにノイズと、音源の位置の特定も10メートルほどの領域において、誤差が10-30ミリメートルほどで得られることも判明した。また、計算時間に関しては、当初は、パソコンで約1日かかる可能性があったが、演算時間を早める手法の開発により、簡易モデルの場合、10分程度ですべての計算ができることが判明した。 これらの成果は、速報的に、日本音響学会で発表を行い論文集に載せたが、本年は世界的に権威のある国際会議であるinter-noise2012で発表を行い、成果の公表を行う予定である。 またこれらの研究が、コンサートホールやチャペルなどの構造物などでのノイズ除去に生かせる可能性があるかを探るために、世界的にも有名な施設であるMITチャペルなどの視察を行うと共に、簡易実験を行い、研究代表者が開発した手法がどの程度有効であるのかを検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の研究計画では、研究一年度目は、単純なケースでの数学的な定式化を行い、データ数が少ない(5000データほどを想定)で数値実験をして、分離と位置の特定が可能であることを確認することが目的であった。またこの数値実験では、計算時間が膨大となる可能性があり、計算時間の短縮が、2年目の研究での課題と目されていた。 本年は予定通り、単純なケースでの数学的な定式を行うことができ、さらに、非常に巧妙な手法を開発することで、単純なケースではあるが、従来の計算の数百倍の速さで計算できることがわかり、研究1年目で、ある程度実際のモデルに近い状態のものが計算できるようになった。研究1年目は、当初の予定の約1.5倍のペースで研究を進めることができた。
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今後の研究の推進方策 |
1年目の研究で当初計画より早く進めることができたので、研究2年目は、データ数が数十万ステップの計算ができるようにしたい。 また、より複雑なモデルに対しての数学的な定式化も行う予定である。また、1年目の成果を音響学会のみならず、建築学会や、世界的に権威のある国際会議で発表する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
データ数の大きな計算をするには、パラレル計算ができるようにプログラミングをし直すため、4-5台のパソコンを購入する予算を申請する。1年目の成果を、inter-noiseなどの世界的に権威のある国際会議で発表するための論文作成費用や海外出張費用の予算も申請する。また、1年目に引き続き、海外の音響施設を視察し、簡易な実験を行うための予算も申請する。そのほか、研究結果をまとめたりするためのアルバイトを雇う予算や計算のバックアップ用のハードディスクの購入予算も申請する。
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