ノイズと音声信号の位置が全く不明な状態において、その混合音からノイズと音声信号を分離しかつ両者の信号の発生位置を特定する手法についての研究であり、今年度が最終年である。最初の2年間で、研究が非常にスムーズに進み、ほぼ当初の目的を達成した。 本年度は、これらをさらに拡張すべく、3次元問題で今までできなかった、減衰を仮定しない状態での位置の特定を行う手法の開発を行った。従来法では、3次元問題においては演算時間の関係から、距離の2乗に反比例した減衰を仮定していたが、本手法の開発により、反射問題では距離の2乗に比例するという仮定が用いることが物理現象に合わないため、本手法の限界でもあったが、3次元問題でも、反射問題を取り扱える可能性が示された。 これらは、建築学会において、速報的に発表を行った。また、2次元問題においても、反射問題にまで本手法が拡張できないかの検討を行い、簡便な手法ではあるが、数学的な定式化をすることにより、数値実験を行ってみて、ある程度、良好な結果を得ている。今後、これらの結果をまとめ発表予定である。また、今後の本研究の方向性を探るために、音響関係としての国際会議としては世界最大の権威のある国際会議であるinter-noise2013(Innsbruck)に参加し聴講を行った。 本研究は、今年度が最終年ということでもあり、今まで3年間の成果を、日本で最も権威のある音響学会誌のAcoustical Letterに投稿し、受理され載せることができた。 今後は、音声信号に反射音が入り混じった場合の手法の開発、また、ノイズは今のところ一般的に音声と同じ程度のノイズを仮定しているが、ノイズが非常に大きく音声が完全に埋もれてしまった場合でも取り出すことが可能かなど、様々な可能性にチャレンジしていく予定である。
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