研究課題/領域番号 |
23560703
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
長井 達夫 東京理科大学, 工学部, 准教授 (00316001)
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キーワード | 通風 / モニター / 睡眠 / 温熱 / エアコン / エネルギー / 住宅 |
研究概要 |
居住者へ窓の適正な開閉方法を指示する「窓開閉アドバイザー」について、試作機を一般居住者に使用して評価してもらうモニター調査を行うとともに、数値シミュレーションにより、その室内環境評価について検討を行った。 今年度は、快適な睡眠環境を得るための「アドバイス」に着目し、好ましい睡眠環境に関する既往の研究をもとに、就寝後に室温を下降させ、明け方から室温を上昇させるような室温軌跡を得るためのアドバイス機能を組み込んだ。夏期のモニター調査の実施前に、数値シミュレーションにより、就寝中にエアコンを停止することにより、上記のような室温軌跡が実現できる見通しを得た。そして、就寝時の室温、外気温等の情報から、適切な窓開閉・冷房発停、設定温度、冷房タイマー設定時間を演算するロジックを考案した。その際、冷房使用を好まない居住者がいることも想定し、冷房使用を抑え目にしたモード(「ECOモード」と称す)と、積極的に使用するモード(「快適モード」と称す)の2つを用意した。 この判断ロジックを「アドバイザー」の試作機にプログラミングし、夏期において5件のモニター調査を実施した。モニター調査の結果、窓を閉めた状態で冷房タイマーを使用した場合、上記の「V字型」の室温軌跡を実現できることを確認した。なお、多くの居住者の習慣とは異なり、窓を開けながらの冷房を指示するロジックも組み込んだが、このような指示に居住者が従った場合、明け方の室温上昇は緩慢であり、快適な目覚めには繋がりにくい可能性があることが示唆された。 一方、上記のモニター調査から、冷房停止後の室温上昇が急激過ぎる場合、また窓を開けながらの冷房により室温が低下し続ける場合があることを確認した。これらの問題の解決のため、数値シミュレーションにより外気温の予測が可能な場合は改善が可能であることを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交付申請書では、モニター調査あるいは実験住宅における実験を実施する計画となっている。今年度は、5件のモニター調査を実施し、計画通り、最初の一週間は「アドバイザー」を用いずに通常の生活を実施してもらい、後半の一週間において「アドバイザー」の表示を確認しながら生活を行ってもらい、前後の睡眠環境アンケートや室温・窓開閉状況の実測データを取得することができた。ただし、モニター調査の件数が系統的な解析を行うには若干少なかったこともあり、アドバイザー装置の導入による睡眠環境の主観的評価を行うには一段のデータ取得が必要である。 また、交付申請書に記載のとおり、モニター調査により明らかになった問題(就寝後の室温の過上昇、過低下)に対して、数値シミュレーションにより改善可能との見通しを得た。 以上を総合的して、「おおむね順調に進展している」ものとして自己評価を行った。
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今後の研究の推進方策 |
今年度までの検討によって、窓の開閉とエアコンの発停指示について、1)外気条件が冷涼で冷房を停止して窓を開けることが可能であることを知らせる、2)窓を開けながら冷房を行うことにより冷房負荷の増大を抑えつつ窓開放による快適感を高める、3)複数開口部のうちどの窓を開閉したら良いかを指示して通風量や冷却量を増大させる、4)就寝時・不在開始時に窓の開閉を指示する、といった機能について、窓開放時間、冷房使用時間、冷房負荷の観点から検討を行ってきた。しかしながら、これら機能の効果の検討が統一的になされてこなかった。 そこで2013年度では、数値シミュレーションにより、上記の各機能の効果を統一的な計算条件(建物条件、使用条件等)のもと、比較検討を行う。その際、構造種別(木造戸建、RC造集合)、および地域の違いに留意して効果の検討を行う。 また、前記の各機能を実装しようとする場合の要素技術開発が不十分であったため、例えば複数開口部の窓開閉判断の場合であれば、各開口からの流入・流出量を各開口に設けられた圧力計から推定するのか、あるいは流入と流出のどちらなのかをデジタルに評価して窓の開閉を判断するのか、といったセンサー仕様と判断ロジックの関係を整理する。 加えて、自然換気だけでは、必要とされる通風冷却量が得られない可能性があることから、強制換気によって通風量の増大を図った場合の効果の有無についても検討を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
2012年度は当初見込額より実使用額が少なかったが、これは他の研究に使用予定だった手持ちのセンサー(圧力計等)を本研究に使用することが可能となったことが一因ではある。ただし、見込額と実使用額の差は15%ほどであり、見積の誤差の範囲内と考える。 2013年度は、数値シミュレーションによる検討のため、新たにパソコン一式を購入予定である。また、追加のモニター調査対応のため、センサー類の購入を計画する。
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