平成25年度は、引き続き会議室、実験室、実習室と屋外において、月1回、ろ過捕集法による菌数濃度(cells/m3)と衝突法による生菌数濃度(cfu/m3)を測定した。衝突法による真菌の測定では、新たに日本建築学会規準で定められたDG-18寒天培地での測定を加えて実施した。また、4月に4回目の浮遊細菌叢の解析を行った。 平成25年度の細菌生菌数濃度は、いずれの室内も日本建築学会規準を満たしていたが、真菌生菌数濃度は7月から10月まですべての部屋で規準を超えた。 研究期間中に行った計4回のうち、信頼性のある結果が得られた2012年7月、2013年1月および4月の細菌叢解析結果より、室内・屋外を問わず浮遊細菌叢は季節により大きく異なっており、7月に比べ4月は細菌種の多様性が低かった。1月と4月は7月に比べ特にFirmicutes門の割合が高く、芽胞形成細菌であるBacillus属が多くなっていた。この理由として、冬季の低温と相対湿度の低下に耐えうる細菌が優先種となることが考えられた。一方、Firmicutes門のうちStaphylococcus属は、在室頻度の高い実験室でのみ季節に関係のない特徴的な細菌であり、衝突法での検出頻度も高かった。しかし、これ以外には各測定場所に特徴的な細菌種は認められなかった。 細菌叢解析により病原性を有する細菌のクローンが各時期・場所とも複数検出されたが、いずれも細菌叢解析で既知菌種との相同性が認められたクローン数の数%であった。また、各場所で毎回検出された病原性の細菌種はなく、室内に定着している病原性細菌種はないと考えられた。 本研究より、室内外の浮遊細菌叢は季節により変動しているが、病原性細菌は少なく、恒常的に在室者がいる部屋のみStaphylococcus属の検出頻度が高いことが特徴的であることがわかった。
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