平成23年度においては、本科学研究費においては、公共文化施設の利用圏域と将来推計を基にした再編モデルの検討を行った。第一段階として一般的な公共ホールの利用圏域データーを整理し、地方中核都市域における運営コストを含めた利用実態を把握した。 平成24年度においては次に東日本大震災における公共ホールの被災・改修状況の全国的な調査を行い、前提となる施設立地状況及び整備状況の変化を捉えた。また、将来的なコスト負担を含めた持続モデルを作成するために、施設運営者へのヒアリング及び指定管理者団体の運営コスト及び長期修繕における改修状況把握を行った。 平成25年度においては、これらの、利用運営に関する基礎データと施設整備状況をGIS上においてシミュレーションを行い、各施設の運営状況を利用効率、経年劣化における施設利用のポテンシャルの推移を整理した。また、人口の居住状況は2030年を一つのベンチマークとし、この時点における居住人口から利用圏域を推定し、2010年度との比較において、将来的な利用状況推計を可視化した。これらの結果から、宮城県・愛知県においては、中山間地域や高齢化率の高い地域にいて、利用圏域の居住人口が減少し運営負荷が大きくなる施設を把握した。また市街地においても、1980年代後半から1990年代後半にかけて、整備された施設が相互の利用圏域人口を奪い合う形となっており、過疎地域、都市部両面において広域的な再編計画と、段階的な改修計画の立案と実施が重要であることを明らかにした。 なお東日本大震災関連の研究結果の一部については、日本建築学会学術講演等で発表を行っている。
|