現在も維持されている日本の伝統的な街路空間〈雁木〉の景観について、それが支えられてきた空間的しくみを明らかにすることを目的とした。新潟県上越市の町の中から城下町高田・港町直江津・在郷町稲田を選んだ。それぞれの雁木通の景観的相違を、当初の設定や居住者の働きかけにより共用空間と町家の間で利用と所有の関係が調整された結果と捉えた。雁木通と小路が格子状をなす高田と直江津において生活領域はまったく異なる。稲田は特異な生活領域をもつ。こうした相違は町の形成過程を反映している。住宅平面から耕地分布まで町の構成要素の配置は密接に関連している。生活用水の位置が住居・屋敷・集落レベルを結ぶ要因となっている。
|