研究課題/領域番号 |
23560721
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
小林 史彦 金沢大学, 環境デザイン学系, 講師 (70293371)
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キーワード | 歴史的建造物 / 空き家バンク |
研究概要 |
平成23年度の研究成果に基づき、空き家バンクシステムの類型化を行い、詳細な事例研究の対象として大和町家バンクネットワークを取り上げた。大和町家バンクネットワークを対象として、その成立条件と初動期における運用実態と課題について研究を行った。大和町家バンクネットワークは、奈良県下の各地で町家バンク事業に取り組む団体から構成され、ノウハウの共有、共同的な情報発信などに取り組んでいる先進事例である。具体的な調査としては、同ネットワークおよびその構成団体の活動内容に関する文献・資料収集、ネットワーク事務局及びすべての構成団体に対するヒヤリング調査を行った。 大和町家バンクネットワークの成立条件としては、中間支援的機能を担う奈良まちづくりセンターを核として、各地区におけるまちづくり団体をゆるやかに結ぶ大和まちづくりネットワークが、大和町家バンクネットワークに先行して機能していたこと、ネットワーク構成団体の中に、奈良町地区や今井町地区などの先進的事例が含まれており、それらが自ら経験したノウハウを提示し、主導的な立場で後発の他地区をリードすることが可能だったことが挙げられた。 初動期の運用実態については、地区によりバンク運営の準備段階に差があるものの、ネットワークによる支援プログラムの実施により、後発地区においても短期間にバンク開設を実現していることが明らかになった。一方で、後発地区においてはバンク掲載物件がなかなか集まらないという課題が共通して見られた。そのような中で、大和町家バンクネットワークが中心となって実施したアートイベント「HANARART」や町家サブリース事業は、開催地域における町家活用機運の醸成に効果的であることが予想された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究は概ね順調に進展している。当初、都道府県の悉皆調査を予定していたが、都道府県による取組のほとんどは定住促進を目的としたものであり、歴史的家屋を主対象としたものでないものが大部分であることが予想されたため、悉皆的な都道府県調査は実施せず、個々の事例調査の中で必要に応じて都道府県を対象とした調査を行うこととした。H24年度に対象とした大和町家バンクネットワークの事例研究の中では、奈良県の役割等を分析しており、今後も事例研究の中で、都道府県の果たす役割について個別にみていくことが有効であると考えている。 事例研究の対象地域における町家所有者調査等を予定していたが、研究の展開過程で所有者等を巡る意識や実態がおよそ共通であり、申請者が実施した先行研究の成果と同様の結果となることが予想されたこともあり、所有者等の調査は実施してきていない。
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今後の研究の推進方策 |
次年度も引き続き詳細事例調査対象地区を選定し、空き家バンクシステムの運用実態と課題に関する現地ヒヤリング調査等を実施する予定である。 また、これまでの研究を通して、歴史的家屋等の一斉公開プログラムが空き家の活用促進において有効であると予想され、その実施において空き家バンクの運営主体が関与しているケースが確認された。 そこで、当初の研究計画には含まれていなかったが、歴史的家屋等の一斉公開プログラムを空き家バンクシステムの構成要素とすることとし、その運用実態と空家活用におけるその有効性の検証を行うこととする。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初は複数の都道府県にわたる詳細事例調査対象地区を選定することを想定していたが、検討の結果、対象地区として最適と考えられた先進的事例が、同一県内でネットワークを形成しているものであったため、調査対象地区は同一県内の11地区となった。それにともない、当初予定したよりも調査旅費の支出額が減少し、次年度使用額が生じた。 今年度も事例調査対象地区について詳細調査を引き続き実施する予定であり、今年度の残額はその中で調査旅費として使用する予定である。また、上述したように空き家バンクシステムの構成要素としてあらたに設定した歴史的家屋の一斉公開プログラムを対象とする調査を実施するに際しての調査旅費等としても使用する予定である。
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