研究課題/領域番号 |
23560722
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研究機関 | 京都工芸繊維大学 |
研究代表者 |
阪田 弘一 京都工芸繊維大学, 工芸科学研究科, 准教授 (30252597)
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研究分担者 |
森田 孝夫 京都工芸繊維大学, 工芸科学研究科, 教授 (90107350)
高木 真人 京都工芸繊維大学, 工芸科学研究科, 准教授 (10314303)
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キーワード | ALS / 住環境 / 非専門 / 支援 |
研究概要 |
24時間連続介助を必要とする多くのALS患者が利用している重度訪問介護制度により、介助に入っている介助者は、患者の家族や福祉関係の仕事に初めて携わる人や学生等、非専門家も多く存在している。そのため、限られた狭い在宅療養空間の中で、介助に対し不慣れなことも多い非専門家であっても介助のしやすい、患者のケアに有効かつ機能的に在宅療養空間を整備する知見が必要である。 そこで、経験や方法などが異なる多様な属性の介助者による動作寸法に幅があると考えられる介助行為において、狭い住空間の中で最低どれくらいのスペースを確保すればよいのかを分析し、患者、介助者双方の在宅療養環境、介助環境の質向上に役立つ資料を得ることを目的とする。 対象は、他人介助による在宅生活を実現したALS患者3名と、各患者の介助者とその住居である。実際にそれぞれの患者の住居を訪問し、介助者が行う介助行為の動画撮影調査と、患者・介助者へのヒアリング調査の2つの調査を行った。撮影を行った介助行為内容は以下である。<清拭>患者の身体をタオル等で拭く。<口腔ケア>患者の口内を清潔に保つ。<文字盤>50音をかいた透明な板を用い、患者の目線から介助者が文字をひろう。<パソコンセット>患者の使用状況に応じてパソコンを移動させる。<スイッチセット>スイッチを患者の操作しやすい位置にセットする。<口文字>患者の口の動きによって文字をひろう。 結果、以下のことが明らかとなった。 1)上記の各介護行為の行為特性および行為範囲が把握できた。2)全面介助が必要な患者の介助は基本的にベッド周りに限定されている。3)介助者の立場や経験による行為範囲差はあまり見られず、介助者の体格差によるものが主であった。4)広い動作スペースを必要とするのは、パソコンセット、吸引、口腔ケアで、患者の必要とする介助に合わせたベッド周り空間の確保が重要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
昨年に引き続き、当初の研究計画において主たる調査・支援対象として予定していた患者1名が諸事情により住空間改善に関わる調査・支援を望まない状況は改善されないままであるため、住空間改修をテーマにしたワークショップによる新たな知見の獲得は当初の目標には至っていない。また、東北地域における患者および介護者への調査は、調査許可を得るための準備に留まっている。 ただし、在宅生活を送る新たな患者2名に対し、実際に調査者が介護に取り組むというワークショップを実施することにより、非専門主体による介護行為に関する調査・支援が実施できたため、非専門主体である介護者の介護負担の軽減につながる住空間整備上の貴重な知見は得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
①被災地である東北地域を含めた、全国の在宅ALS患者および介護者の支援制度利用、住環境実態と要求に関する調査、 ②ALS患者と介護者をつなぐ意思伝達用設備の開発・改良ワークショップ、 ③学生・支援者主体の自主工事による住空間改修のためのワークショップ、 を前年度に引き続き、それぞれ並行して実施する。 また、最終年度として、各ワークショップで得られた知見や成果を発表・検証・議論するための場として、シンポジウムの開催も計画する。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初の研究計画において主たる調査・支援対象として予定していた患者1名が、諸事情により住空間改善に関わる調査・支援を望まない状況は改善されないままであること、また、一方で新たな調査対象患者2名に介護者の介護行為に関する調査協力を得ることができたため、調査研究内容およびスケジュールの更なる見直し・調整を実施した。その結果、住空間改修ワークショップおよび全国患者とその介護者への調査で用いる予定であった研究費の一部を今年度の非専門主体の介護行為に関する調査資金に使用するとともに、その残額は繰越すこととした。 その繰越分を含め、最終年度は今年度達成できなかった以下の使用計画で進める。①多数の学生および支援者主体による住空間改修とコミュニケーション用設備製作のワークショップのための諸費用(関連工具・備品・材料、制作補助者やワークショップ運営補助者への謝金等)。②全国の在宅独居患者の住環境実態と要求に関する調査のための諸費用(調査旅費、謝金等)。③本研究で得られた知見や成果を広く発表・検証・議論するための場として、シンポジウムの開催を計画しており、そのための諸費用(会場費、講演者旅費・謝金等)も使用計画に含める予定である。 なお、その他の使用内容として、ALS患者および介護者に対する実態調査は、患者および介護者との信頼関係を築き、継続することが重要であるため、複数回の患者宅への訪問旅費も含まれる。
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