研究課題/領域番号 |
23560724
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
小浦 久子 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (30243174)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 景観計画 / 総合的計画管理 / 開発マネジメント 英国 / 空間計画 EU |
研究概要 |
景観は土地利用の変化と連動することから、景観計画を土地利用計画や開発管理と連携して使う取り組みが考えられる。そうした景観計画の使い方の事例を調査するために、2011年4月までに景観計画を策定した296景観行政団体に対してアンケート調査を実施し、都市計画の実態と景観計画の運用実態について情報収集した(回答率83%)。この調査から、北海道・長野県域・九州沖縄地域の自治体で、景観計画と開発管理を連動させる工夫を試みていると考えられる事例が見られた。この結果と合わせて、これまでの調査から確認している先進的に取り組んできた事例(真鶴・各務原)と九州地域の一部について現地調査を行った。アンケート調査の集計整理に手間取ったことから、環境保全型の開発管理への取り組みが見られる北海道と長野県内の事例について現地調査の実施が次年度に残された。 現地調査から、景観ー環境系アプローチの観点からみると、景観計画は、(1)景観計画区域内にある多様な土地利用のまとまりに対し、景観まちづくりにより順次計画づくりを進めるためのしくみを位置づける、(2)計画区域全体で共通する開発管理課題に対応するルールを決める、といった役割担っていることがわかった。これまで想定していなかったまちづくりや地域づくりと連動するしくみによる土地利用のまとまりごとの開発管理の可能性についての論点が得られた。 また、京都と東日本大震災の被災地における調査により、景観の持続と土地利用の変化との調整における計画課題を検討する機会を得ることができ、時間軸のなかで開発や土地利用による変化と持続の調整が求められるときに検討すべき計画課題は、景観ー環境系アプローチによる総合的な計画管理においても考えるべき論点となることがわかった。 調査による制度運用の事例収集と、調査をとおして今後検討すべき計画課題の論点整理を進めることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
アンケート調査の集計整理に手間取ったため、調査結果のもとづく景観計画事例の現地調査のうち一部(北海道・長野県域)が実施できなかった。しかし、アンケート調査により景観計画の使い方についての一般的傾向の把握はできており、現地調査からは景観まちづくりによる地区レベルでの計画管理のしくみの可能性を見出すことができた。また、京都と東日本大震災の被災地での景観課題に関する調査検討の機会を得たことにより、開発や土地利用などによる変化のタイプやスピードなどが計画管理における検討課題としてあることがわかった。 環境保全型の土地利用管理についての事例調査は遅れているが、研究の目標の1つである総合的景観管理の計画制度を検討するうえでの論点はある程度明らかにでき、今後の課題検討の準備はできたと考えている。 アンケート調査と事例調査の作業に予定外に時間がとられたことから、次年度の準備が遅れている。EUの空間計画と英国の計画制度における開発マネジメントの考え方の調査を行うための事前作業が遅れている。しかし、これまでも英国の計画制度については調査を続けており、新たな動向についても一定把握できていることから、調査の準備は遅れているものの対応可能と考えている。
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今後の研究の推進方策 |
残っている現地調査を着実に進めるとともに、これまで実施してきた土地利用や地域環境の管理と連携させた景観計画の事例調査資料の整理分析を進め、景観ー環境系アプローチによる計画課題の論点を明らかにしていく。このとき、合わせて連携研究者より主に制度論の観点から専門的意見を聞くことにより、計画制度上の論点を具体的に提示できるようにする。 現在、日本では土地利用を総合的に計画するしくみや地域環境の持続の観点からの開発管理のしくみは制度上用意されていない。景観計画は行政区域を一体的に計画できる計画制度であることからその活用事例に着目し、景観ー環境系アプローチからの検討に取り組んでいる。このため、海外の計画制度の考え方やしくみについて調査することの意義があると考えている。EUの都市政策のなかで進化してきた空間計画の考え方と制度設計の考え方、計画許可制度を基本とする英国における近年の開発マネジメントとモニタリングの考え方は、総合的計画管理の計画課題を検討するうえで有用と考え、現地調査を実施する。 こうした計画制度の考え方と運用の実際についての情報資料を分析することにより、23年度に実施した事例調査と合わせて、総合的な計画管理のための計画課題の検討を進める。
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次年度の研究費の使用計画 |
国内旅費は、景観計画の事例調査(北海道と長野県内の自治体を予定している)の継続、調査結果に関する連携研究者との専門的意見交換のための打合せ、学会発表のために使用する予定である。場合によっては連携研究者に来学してもらう場合の旅費が必要になることが想定される。 海外旅費は、EUの空間計画についての調査および英国の新たな計画制度における開発マネジメントのしくみについてヒアリング調査および現地調査を行うために使用する。 24年度も現地調査を中心に行うため、調査で得られる文献資料やヒアリング調査データの整理とまとめの作業量が多くなると考えられる。このため、研究補助および専門的な支援に対して謝金が発生すると考えている。また、海外文献の収集、現地調査の分析整理のための地図情報の整備のための費用、およびこれら情報の分析のために必要となる消耗品、特に図版・空間情報・地図情報が多いことからカラープリンター関連の消耗品の費用が発生する。 23年度予定の景観計画の現地調査が残っているので、国内旅費が少し多くなる可能性があり、その場合は、他の支出を抑制して調整する。
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