研究課題/領域番号 |
23560726
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研究機関 | 鳴門教育大学 |
研究代表者 |
金 貞均 鳴門教育大学, 大学院学校教育研究科, 教授 (10301318)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 国際情報交流(韓国) / 居住の民族性 / 居住の文化性 / 異文化理解 |
研究概要 |
本研究は韓国の近代住宅発展の系譜を日本住宅の影響の側面から究明しようとするものであり、近代期、日本と人的・経済的交流が盛んだった、韓国南部地方の新興韓屋を主な調査研究の対象とする。なお、韓国の近代住宅を日本住宅の影響の側面から再照明するにあたり、日本の近代住宅を西洋の影響の側面から再考し、住宅の近代化における日韓比較を行う。今年度は、(1)文献考察による研究概念・用語等の明確化、(2)近代期日本住宅の変遷、(3)近代期南部地方における伝統韓屋の変遷、(4)研究対象韓屋の資料収集と実測調査(1)、の四つの課題を中心に研究を進めた。研究成果は次のとおりである。 第一、文献考察により研究概念・用語等を明確にした。「近代期」と「近代」、「近代期の住宅」「近代住宅」に対する認識の差を確認したうえ、本研究では日本植民地時代の住宅を近代期の住宅と捉え、近代住宅との違いを明確にした。 第二、「中廊下型住宅」を中心に日本住宅の近代化の本質と空間変容の実体を文献と図面を通して考察し、住居史的意味を新たにした。続き間形式の日本の伝統住宅に対して、中廊下で空間を分ける「中廊下住宅」を西洋の影響の側面から見直した。特に日本とアメリカの住宅平面を通時的に比較・分析した。 第三、近代期南部地方における伝統韓屋の変遷について地方史などの文献を用いて、近代期前後の南部地方の人文・社会・自然環境や南部地方の発展、日本との交流、日本人の南部地方経営の実状を明らかにした。なお、南部地方の新興韓屋の平面構成、配置形式、マダン(庭)の構成方式や形態など、空間構成要素の変化に注目した。 第四、全羅南道地域の研究対象韓屋22棟の基本資料の収集および分析を行い、実測調査のための準備(調査項目の確認:平面、木架構造や部材率、外観・配置・建築材料、マダン(庭)の構成方式、他現地調査で追加)を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
課題研究初年度である本年度は東日本大震災の影響もあり、研究費支給が予想以上に遅れを取り、研究計画の実行、特に韓国の調査計画が狂ってしまった。後半に持ち越された調査日程は海外共同研究者とのスケジュール調整が上手くいかず、年度中に実施することができなかった。ただそれ以外は計画通り進められ、次年度の前半に調査が実施できるよう準備は整っている。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度には次の三つの研究計画を推進する。第一、韓国全羅南道における研究対象韓屋(総22棟)の実測調査(1)、第二、韓国慶尚南道における研究対象韓屋(総15棟)の資料収集と実測調査(2)を行う。調査では、平面の実測、木架構造や部材率の確認および実測、外観・配置・建築材料の確認、マダン(庭)の構成方式等の確認作業を行う。また写真撮影、聞き取り調査等を実施し、近代期南部地方における新興韓屋の発展の様子を明らかにする(現地確認調査で新たに発見された新興韓屋も含む)。第三、近代期南部地方の新興韓屋の平面特性を中心にみた日本住宅の影響について総合分析を行う。ここでは南部地方の新興韓屋における日本住宅の影響をについて、(1)アンチェ(内棟)の空間拡大、(2)間取りの変化(複列化傾向、集中式平面)、(3)サランチェ(舎廊棟)の機能分化、(4)大庁(板の間)の室内化、(5)廊下の導入、(6)建具の変化、(7)住棟配置およびマダン構成、(8)付属施設(便所、浴室)の導入、(9)近代的建築材料および構法、(10)生活動線と家事労働の軽減化の側面から考察・分析する。 平成25年度には次の研究を行う。第一、近代期以降の日韓住宅調査を実施する。近代期以降の住宅として日本の一戸建て住宅(一部集合住宅を含む)、韓国のアパート(一部一戸建て住宅を含む)に対する調査を実施する。調査方法として、日本においては大手住宅メーカーから間取り図を取り寄せ、韓国においては大手住宅メーカー建築の現地間取り調査を実施する。伝統性と近代化要因の継承と変容に焦点を合わせ分析・比較するとともに、韓国の住宅においては日本住宅の影響の側面から再検討を行う。第二、課題研究の最終年度であり、研究の結果を総括し、報告書をまとめ、成果の発表を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度に使用する予定の助成金(20万円)が生じた理由は、東日本大震災の影響もあり、研究費支給が遅れ、研究計画の実行、特に韓国の調査計画が狂ってしまったことにある。そのうえ、海外共同研究者との調査スケジュール調整が上手くいかず、年度中に調査を実施することができなかった。そのため調査経費の一部が次年度に持ち越された。当経費は次年度に請求する研究費と合わせて、まず次年度の前半に韓国全羅南道における実測調査(1)を実施し、後は次年度の研究計画通り研究を進める。
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