本研究は、本格的な少子高齢化社会、人口・世帯減少社会の到来を目前に控えたわが国の現状を踏まえ、量的充足から質的充足へ、そして住宅ストック重視、市場重視等の政策転換が求められている中で、中古住宅市場の活性化によるストックの有効活用、柔軟な居住地選択機会の提供による住み替えを促進するために、中古住宅の価格を適正に評価できる地理的加重回帰モデルを構築し、地区別中古住宅価格の構成要因を明らかにした上、今後の中古住宅市場の活性化へとつながる適正価格評価の仕組み及びそれに関わる政策提言を行うことを目的としている。 本年度は昨年度に続き、主に地区別の価格形成要因とその分布状況の分析を行った。分析の際に地理的加重回帰モデルの要点は、重み行列の作成にカーネル関数利用することであった。つまり、立地環境の影響に関する重み関数の設定は線形関数でも可能であるが、地域間の滑らかな影響変化を捉えるためにカーネル関数などを利用し、また、局所的な住宅価格形成要因の決定係数を推定し、住宅属性(面積、築年数、設備(システムキッチン、床暖房など)等)の関数の有効性を検証した。解析成果を踏まえながら、今後我が国においては、住宅のストックが量的に充足し、環境問題や資源・エネルギー問題がますます深刻化し、これまでの「住宅を作っては壊す」社会から、「いいものを作って、長く大切に使う」社会へ移行し、住宅ストックの質を高めるとともに、適切に維持管理されたストックが市場を通じて循環利用される環境の整備が必要であり、今後住宅性能・居住環境・住宅面積等の居住水準に基づき、居住ニーズと住宅ストックのミスマッチの解消による循環型住宅市場の形成が重要であることを指摘した。
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