研究課題/領域番号 |
23560734
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研究機関 | 北海道工業大学 |
研究代表者 |
久保 勝裕 北海道工業大学, 空間創造学部, 教授 (90329136)
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研究分担者 |
椎野 亜紀夫 北海道工業大学, 空間創造学部, 准教授 (00364240)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | まちづくり市民事業 / 北海道 / 地域運営 / 多主体協働 |
研究概要 |
3カ年計画の初年度である平成23年度の研究実績は、以下の通りである。 第一に、全国的な先進事例地区である長野県飯田市、山形県鶴岡市、北海道富良野市を対象とした調査を実施した。これによって、市民事業単体の事業スキームから多主体協働の地域運営システムに至るまでの分析を先行的に行い、今年度から本格的に実施する北海道を対象とした調査における分析軸を設定した。特に富良野市での調査分析の成果は、「季刊まちづくり33号(学芸出版社)」に発表した。ここでは、地元企業等が出資して「まちづくり会社」を設立して集客施設を建設し、さらには、地域での多主体によるまちづくり事業の中核的な存在になっている実態を報告した。 第二に、北海道を対象としたまちづくり市民事業の実施状況調査を実施した。これによって具体的な活動が明らかになった約15地区を対象に、基礎的資料を収集して情報整理を行った。 第三に、これらのデータに基づいて、滝川市、長沼町、江差町、鹿追町を対象とした現地調査を実施し、主に市民事業の生成プロセスを分析した。例えば、江差町では、市街地整備事業を推進した商店街組織が、事業完了後も様々なまちづくり事業を継続する一方で新たな市民団体を派生させ、実態として地区のパートナーシップ組織として機能している実態等を明らかにした。また、鹿追町では、グリーンツーリズム関連の民間事業体が連鎖的に設立され、行政による支援を受けつつ、町民による地域運営を実現させつつある実態を明らかにした。なお、長沼町と江差町における調査分析の結果は、日本都市計画学会学術論文集に投稿中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度の研究計画では、(1)全国の先進事例調査から以後の調査分析における「分析軸」を設定する、(2)北海道を対象としたまちづくり市民事業の実施状況調査を実施する、の2点を目標としていた。 (1)については、助成金の交付が遅れたこともあり、特に本州方面の農村系の事例調査が未了である。しかし、それに代わって、今年度に予定していた北海道内の事例調査を先行的に進めることができた。一方、市街地系に関しては、「研究実績欄」に示した通り、本州方面も含めた3都市を対象とした詳細な調査を実施できた。市街地系と農村系ともに、その成果を論文としてまとめ、その過程で「分析軸」をある程度は明確にすることができたことから、当初の目的は概ね達成できたと考えている。 (2)については、概ね目標を達成できたものと考えている。また、想定より北海道内における市民事業体の数が少なかったことから、当初予定よりも各々の基礎的資料の収集を進展させることができた。これより、上述の北海道内の事例調査を先行的に実施することができた。 全体として、研究成果を3編の論文(投稿中を含む)としてまとめることができたことから、今年度以降の研究につながる成果をあげたと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
次年度においては、当初の予定通り、北海道内の事例地区を対象に下記の2点を中心に研究を進める。これらに加え、昨年度に実施できなかった農村系の先進事例調査を実施する。 対象地区は、市街地系は富良野市・岩見沢市・江差町、農村系は鹿追町・長沼町・滝川市江部乙地区、などを想定している。(1)生成プロセスのモデル化を行う。市街地系の「市民事業体」は、事業組合から発展したもの、旧中活法に基づくTMOが発展したもの、商店街組織が発展したもの、農村系では、移住者組織が発展したもの、新規就農者組織が発展したもの、農業生産法人の事業増殖によるもの、等が想定される。これらが設立され、事業展開に至った経緯を、地域社会の特性(ローカルレジーム)、事業展開・まちづくりの経緯、地域資源の活用実態、母体組織の有無・性格、事業生成に至った契機あるいはモチベーション、の視点から詳細に明らかにし、モデル化する。(2)市民事業スキームのモデル化を行う。公益性をもった市民事業の場合、当初は公的な補助金等による事業実施を経る場合が多いが、事業継続には、ファイナンスの自律化が次の課題となり、公益性と経済性のバランスの上に事業を継続していくことになる。ここでは、組織形態と出資者の属性、事業費獲得の方法、周辺の関連組織との連携実態、事業展開プロセスにおける市民事業体の性格の変遷、等を主な分析軸とし、事業を成立させている仕組みを詳細に解明してモデル化する。 なお、最終年度である平成25年度には、これらに続いて(3) 地域運営システムのモデル化と(4)多主体協働による地域運営システムの構築に至るプログラム化を行う予定であるが、(1)から(4)を地域毎に一体的に調査分析した方が効率的であることも想定されるため、場合によっては対象地区を絞った上で一体的に分析を進める。
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次年度の研究費の使用計画 |
本研究は現地調査に基づいた分析が中心であり、次年度における研究費の使用については、当初の予定通り、国内旅費および研究補助に対する謝金の支出を予定している。 国内旅費については、昨年度に助成金の交付が遅れたこともあり、日程上の問題で一部未了となっている本州方面での先進地域の事例調査を継続して実施する。研究代表者と研究分担者が、2から3地域づつ、各2日程度を想定している(100千円×5回=500千円)。 また、北海道内の市街地系3地域、農村系3地域の計6地域の現地調査を予定している。前者は研究代表者、後者は研究分担者が主に実施する予定である。1地域2回、各2日程度の調査を想定している(50千円×12回=600千円)。 謝金等については、研究協力者および研究補助をお願いする学生への支出を予定している。現地調査に先立つ基礎的資料の収集・整理・入力、現地調査の補助、ヒアリング調査後のテープ起こし、などの補助が必要である(25千円×2名×8月=400千円)。 なお、本研究においては、調査および分析に必要なパソコンやレコーダー等は既に保有しており、新たな設備備品や消耗品等の購入は予定していない。また、海外旅費の支出は予定していない。
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