最終年度では、事例都市に対する補充調査を実施して分析を進めた。 第一に、市街地系の事例分析は、富良野・岩見沢・江差・稚内・函館においてハード事業を実施している市民事業体とし、初年度に調査した飯田市の事例を加えた。例えば、「株式会社飯田まちづくりカンパニー」は、特定目的会社を用いた事業スキームで再開発事業に関与し、組織分化によってソフト事業を展開することで次世代の人材育成を図っている。同地区では各種の市民事業体が「連絡調整機関」を設置し、同社が突出した主導権をにぎることなく「しなやかに連携協力しあう仕組み」を構築している。「ふらのまちづくり株式会社」は、観光集客施設を公益的ディベロッパーとして建設し、関連団体によるソフト事業を支援する中で同社を中核とする多主体協働体制を構築している。地産地消をキーワードとして農業と観光分野を中心市街地でつなげる動きが特徴的に見られ、市全域での広域的な協働関係が構築される可能性が見えてきている、等を明らかにした。 第二に、農村系では、長沼・滝川市江部乙地区・鹿追・上富良野・根室で事業展開する市民事業体を分析対象とした。鹿追町の「NPO法人北海道ツーリズム協会」は、地区の将来像を調査・研究し、構成員の各々がグリーンツーリズム関連企業を連鎖的に設立してその先駆的役割を担った。正式な協議機関はないものの、これら企業群が緩やかな連携のもとで地区全体としてグリーンツーリズムを受け入れる体制を構築した。また、「江部乙丘陵地のファンクラブ」は、フットパス事業を通じて、都市農村交流団体と地域交流団体の両面において機能してきた。事業拡大と組織分化によって波及事業を展開し、行政や関連団体による多主体協働のプラットフォームとしての役割を担いつつある、等を明らかにした。この成果は、日本都市計画学会都市計画論文集に投稿中である。
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