研究課題/領域番号 |
23560751
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研究機関 | 愛知工業大学 |
研究代表者 |
中井 孝幸 愛知工業大学, 工学部, 准教授 (10252339)
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キーワード | 図書館 |
研究概要 |
平成24年度は、23年度に引き続き公共図書館での調査に加え、特徴的なサービスを行っている大学図書館においても調査を行った。 公共図書館では、育児支援センターや公民館機能、商業施設などとゆるやかに連携しながら複合している長野県にある塩尻市立図書館(えんぱーく)と、役場や小学校に隣接して観光地にも近い小布施町立図書館(まちとしょテラソ)において、来館者アンケート調査を行った。両施設とも駅に近く、中心市街地に位置していることからも、「まちづくり」として図書館が建設された経緯もあり、館内での居場所形成だけではなく、図書館への期待、利用のきっかけなどについて分析を行った。複合化することで今まで利用していなかった人も来るようになっているが、単一目的の利用者が多く、図書館内で利用があまり展開されていなかった。 一方、大学図書館では昨年度の愛知工業大学と大手前大学に引き続き、文系のリザーブブック制度など授業と連携してサービスを行っている国際基督教大学とネイティブの教員が常駐するMULCと呼ばれる学習スペースを持つ神田外語大学の図書館にて来館者アンケートと15分おきの巡回プロット調査を行った。着座行為率が95%を超えるなど、着座に対する要望は非常に高いことがわかった。 公共図書館と大学図書館との座席選択などを比較することで、同じ窓側の座席を選択しているが、公共図書館では窓からの眺望などが理由として挙げられているが、大学図書館では集中して作業ができることが一番の理由となっている。同じような環境の座席でも、利用内容に応じて利用意識はかなり異なることが読み取れた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
地域における図書館が果たすべき役割については、平成23年度の調査で複数図書館の使い分け利用行動として整理できた。平成24年度は中心市街地に立地する図書館において、図書館への経路や立ち寄り、利用のきっかけなどから図書館への期待や図書館像について整理することができた。 また、公共図書館と大学図書館を比較することで、利用者が図書館に求める「質」の違いのようなものが浮かび上がってきた。本来、図書館とは静寂な環境が保たれている場所であるが、大学図書館においては「ラーニングコモンズ」と呼ばれるグループによるコミュニケーションを通じた学習環境が計画され始めている。文系や理系、外語大等様々な大学図書館で調査を行い、グループ利用も増えているが、基本的には静かに作業に集中できる環境を望んでいた。それゆえに、静かな場所と会話してもよいにぎわいの場所とを使い分けていた。 公共図書館でも本を借りに来る利用者は7割以上いるが、残りの3割は図書の貸し出しだけを目的に利用していないことがわかる。様々な施設機能と複合していたり、観光スポットに近い位置に立地していると、本の貸出だけが目的でなく、ふらっと立ち寄る利用者も少なからずおり、今まで利用してこなかった人も図書館を利用するようになっている。 つまり、にぎわいと静寂な場を明確に分けて計画するなど、平面計画や断面的な空間の構成の違いの、縦割り型の複合施設ではない緩やかな機能の連携が、数多くの新規の利用者の利用を増やしていくのではないかと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
平成23年度、24年度の調査から、図書館が提供しているサービスや置かれている状況により、利用者の図書館への意識は異なっていることが分かった。一方で、地域が違っていても、着座行為率などの分析では、どの図書館も65~70%と変わらない項目も見受けられた。複合施設との連携や立地する状況などによって、図書館に対する期待も異なるなど、図書館の特徴と利用内容をより詳しく分析する必要がある。 塩尻市立図書館では児童の友人たちとの来館が、他館に比べると非常に多かった。これは、図書館内だけではなく他の複合施設や共用空間で遊びながら利用しており、滞在時間も長くなっていた。こうした利用状況は、1館ずつアンケート調査や行動観察調査を行ってはじめて明らかとなった事象であり、今後も図書館が提供しているサービスや立地特性、設置の経緯などからいくつかの公共図書館を選定し、図書館利用の状況と図書館に対する意識をとらえていきたい。 また、図書館が静寂な環境だけを満たしていればよいのではなく、大学図書館のように会話を前提としたコーナーやスペースの計画も今後図書館の魅力になると予想される。1日2000人が来館するような図書館では、ピーク時に300~400人近い利用者が滞在していることになる。そうした「にぎわい」のある空間をもつ図書館において、公共図書館だけではなく、広く大学図書館まで含めて、どのように図書館で過ごしているのかも見ていきたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
今まで行ってきた来館者アンケート調査や行動観察調査を、特色あるサービスや取り組みを行っている全国の図書館から選定したいと考えている。平成24年度は関東地方にある大学図書館で調査を行うことができたので、視察によるヒアリング調査だけではなく、来館者アンケート調査や行動観察調査などの調査が主体となるので、そちらに研究費を充てたいと考えている。 平成25年度も全来館者を対象とした入館時に配布し退館時に回収する「アンケート調査」、15分おきに館内を同じ経路で巡回して位置、推定属性、性別、姿勢、行為内容を 調査用紙にプロットする「巡回調査」を中心に調査を行いたい。また24年度に行った児童開架スペースの行動観察を重点的に行うため、場所を固定して推定属性、性別、姿勢、行為内容を記録する「定点調査」や、23年度に行った利用者の館内での行動を逐一記録していく「追跡調査」などを複合的に組み合わせて、利用行動をとらえ利用意識とともに詳細に分析を行いたい。 行動観察調査から得られたデータをもとに館内での利用行動を連続的に見るためのアニメーションの作成も引き続き行いたい。今までは、性別だけで分析していたが、大学図書館の分析で「個人」と「グループ」に分けてアニメーションを作成したところ、利用する場所の偏りが明らかとなった。 平成25年度は、研究の集大成でもあるが、調査事例を一つでも増やし、行動観察のデータを活かしたアニメーションの定量的な分析についても行っていきたい。
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