最終年度は触知案内図(以下触知図)に記載する情報量とその提示の仕方について実験研究を行う計画であり、前年度未実施の適切な縮尺の検討を行う実験を合わせて実施した。具体的には岡山県立盲学校の校内配置図を示す触知図を3種類の縮尺(1/100、1/200、1/300)で製作し、全盲被験者10名により情報の伝わりやすさを官能評価と指先の動作解析で調べた。縮尺の違いにより情報量も異なるので、当初目的である情報量の検討も同時に行った。その結果、触知可能な大きさの図に全体構成がわかる触尺の小さい図と各棟の詳細図を併記することが有効であり、段階的表示の効果についても可能性があることが分かった。また、実験場である大学校舎の平面触知図を2種製作し、全盲被験者が、室空間の大きさや室間距離等を触読で読み取る様子と距離や寸法の伝え方、その正確度を詳細に調べた。訓練を受けている被験者は距離を長さの単位で把握できるが、それ以外の被験者はある数値以上は認識しにくいことや長さを示すスケールの提示が効果的であることなどが分かった。段階的情報提示では上記2種の実験のデータ解析が途中段階で有り、26年度中にまとめて提示場所の表示方法等の知見を得たい。 23年度は、大阪、東京、福岡にある69カ所の公共建築物や駅舎等を訪問し、74種のサンプルを得た。触知図の設置状況や法や記号の使い方などの表示方法を分析し、最も重要な現在地記号に問題があることが分かった。24年度は全盲被験者による実験を行った。立体コピーで作成した様々な触知図を用いて現在地記号の形状や寸法に関する知見を得、次に本格的な実験用触知図を5種製作し記号の表面性状により形状の性能不足を補うことの可能性を調べた。これらの成果は日本建築学会大会にて24年に2編を、25年み3編を発表した。最終年度成果は26年9月に開催の同大会にて発表する予定で2編を投稿済みである。
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