研究課題/領域番号 |
23560755
|
研究機関 | 広島工業大学 |
研究代表者 |
村井 裕樹 広島工業大学, 環境学部, 准教授 (30455563)
|
研究分担者 |
森保 洋之 広島工業大学, 環境学部, 教授 (80016542)
吉村 英祐 大阪工業大学, 工学部, 教授 (50167011)
|
キーワード | 高齢者 / 障害者 / ユニバーサルツーリズム / 歴史的建造物 |
研究概要 |
研究実施計画は、概ね計画通り実行できた。以下、具体的に記載する。 1.宮島における調査:「①宮島の住民による観光客への支援に関する調査」宮島(広島県廿日市市)の住民等(宮島の施設に勤務する者を含む)による観光客への支援について、旅館従業員に、支援の経験、意識、提案などについてアンケート調査を行った。旅館のバリアフリー化の推進、従業員は自身の支援スキル不足を感じていることなどが明らかとなった。「②観光客へのヒアリング調査・島内案内板の情報提供に関する調査」前年度に引き続き、調査精度を高めるため観光客へのヒアリング調査を行った。休憩所の少なさ、案内板での距離記載の必要性、ぬかるみや水たまりが多いことなどの指摘が多く、休憩所の設置は境内でも指摘が多かった。島内の移動情報では休憩場所や距離情報を求める意見が多く、移動情報と身体機能の関わりが観光の支援を検討するうえで重要となることが明らかとなった。 2.観光地におけるユニバーサルツーリズムの取り組みに関する調査(宮島以外を対象):各地のユニバーサルツーリズムの取り組みについて、主に文献やウェブサイトを資料として検討を行った。観光支援を行う団体等の活動の積極性、観光客への情報提供など重要性が明らかになった。 3.宮島の住宅地の成り立ちに関する調査:宮島は住宅地でもあるため、その成り立ちを明らかにした。現在の市街地はかつて寺社関連であった敷地を利用している場合も多く、住宅地形成年代により状況が異なることなどを確認した。 4.車いすの走行性に関する実験:スロープの形状(直線・曲線)の違いによる車いすの走行特性について比較実験を行った。被験者の評価は、スロープの曲率が大きいほど車いすの走行性と操作性いずれも低くなり、走行の所要時間も長くなった。更に、介助走行よりも自走走行のほうが曲率の増加に伴う所要時間の増加率が高くなることもわかった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度は、本研究の目的である、歴史的観光地のユニバーサルツーリズムを検討するうえで、平成23年度に得られた現状の課題など基礎的知見を土台とした研究を進め、本研究で柱としている「人」「建築」「地域特性」「移動・安全」に関わる研究の目的に対しておおむね達成できている。 具体的には、旅館職員へのアンケート調査から、旅館の職員による建物のバリアフリー状況についての認識状況や、観光客への支援(高齢者等に対する福祉的支援)について高い意識で行っていることを知ることができ、ユニバーサルツーリズムの実現に不可欠な観光地住民等による支援の可能性を知ることができた。また、平成23年度に実施した観光客へのヒアリング調査で得られた観光時の不便に関する結果を精査し、調査項目を整理して同様な調査を行い、また島内の主に案内板のバリアフリー調査とあわせて、観光客が不便と感じる項目について特徴的な傾向が得られた。宮島以外の地域における観光客への支援状況については、先進事例や課題について整理を行い、アンケート調査の準備がほぼ完了した状況である。 また、地域特性の分析から、住宅地の成り立ちの特性を把握することができ、住民の生活をふまえた観光客への支援(宮島は神社仏閣など観光施設と住宅地が混在しているため、双方のを考慮する必要がある)を検討するための資料を得られた。また、車いすの走行特性の研究から、路面の形状(直線と曲線)の違いによる車いす使用者の走行特性の感じ方や所要時間などについて情報を得ることができ、直線状の長大なスロープを設置しにくいケースも多い歴史的観光地におけるスロープ設置の考え方について知見を得ることができた。 また、平成23年度の研究成果を、宮島や周辺地域の住民を対象とした報告会を実施し地元への還元と、住民の視点での新たな指摘を受けることができた。
|
今後の研究の推進方策 |
平成24年度は、観光客の受け側である観光地住民等(その地に勤務する者を含める)による観光客への支援の可能性について、旅館従業員から意識や課題を得ることができ、また、高齢者や障害者の観光客から宮島観光時の課題についてより精度の高い情報を得ることができた。平成25年度は最終年度となるため、これまでの研究成果をまとめ、必要な調査を行っていく。 1.宮島住民等による観光客への支援の可能性について、平成24年度結果を精査し、より幅広い住民等を対象としたアンケート調査を実施する。 2.宮島以外の観光地における高齢者・障害者の観光支援の状況について、支援内容や課題のアンケート調査を行う。 3.平成24年度研究結果について、宮島住民への市民講座を通して成果の還元を行う。 4.3年間の研究成果をまとめ、歴史的観光地におけるユニバーサルツーリズムのあり方について提案を行う。
|
次年度の研究費の使用計画 |
次年度の研究費の主な使用計画は以下のとおりである。 1.宮島住民等に対するアンケート調査を平成24年度に引き続き実施することを計画しており、印刷費(アンケート用紙)、郵送費(発送・回収)、礼状費(印刷、郵送)回収データ入力者への謝金として使用する予定である。また、宮島の建造物やその他周辺地域・移動経路に関するバリアフリー調査を、平成24年度に引き続き実施を計画しており、この調査員への謝金として使用する予定である。 2.全国の観光地または観光協会を対象とし、観光地におけるユニバーサルツーリズムの現状についてアンケート調査を計画しており、印刷費、郵送費、礼状費、回収データ入力者への謝金として使用する予定である。 3.研究成果報告書作成のための印刷費および製本費として使用する予定である。 4.研究代表者と分担者間の研究打合せや、視察調査のための旅費として使用する予定である。
|