アメリカ、特に戸建住宅地のデザインレビュープロセス(サンフランシスコ市、サンノゼ市)および日本における景観法の運用実態を通して、定性的・裁量的要素を含んだデザインガイドラインへの適合性を審査するプロセスについて研究を行ってきた。その結果、以下のことが明らかとなった。 ①サンノゼ市では戸建住宅の開発申請手続きプロセスで公開ヒアリングを含むのは再ゾーニングを伴う案件のみあり、件数の多い戸建住宅のデザインレビューの殆どは申請受け付けのカウンターで簡易に処理されていることがわかった。一方、サンフランシスコでは戸建住宅が密接している状況下で、市民からの申請に基づいて公開ヒアリング(DR)が実施される。DR申請は隣家の居住者によるものが主であったが、申請者の意見の正当性はレビューによって担保され、個人的・恣意的意見は排除される仕組みとなっていることがわかった。 ②誘導手法として届出・勧告制を採用している景観法に基づく景観形成基準への適合性を高める方策としては、①届出対象行為が大規模なものに限定される、②完了検査が殆ど実施されていない、③自治体職員が専門職でなく、さらに数年で異動する人事システムにおいて審査体制に限界がある、といった課題が浮かび上がってきた。こうした課題に対しては、第3者機関が手続過程の一部を担うといった方策が考えられる。ただし、この場合は第3者機関が市民から信頼される力量を持ち、届出手続過程の情報公開も併せて実施することが必要と考えられる。
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