研究課題/領域番号 |
23560761
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研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
吉田 鋼市 横浜国立大学, 都市イノベーション研究院, 教授 (60111704)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 建築史・意匠 / 建造物文化財保存 / 鉄筋コンクリート |
研究概要 |
平成23年度は、オランダの4つの保存もしくは再建の実例(ロッテルダムのキーフフーク集合住宅とファン・ネレ工場、ヒルフェルスムのゾンネストラール・サナトリウム、オッテルローのクレラー・ミュラー美術館のリートフェルト・パビリオン)や、フランスの実例(ル・ランシーの教会堂、ル・アーヴルの再建地区、ぺサックの集合住宅、フィルミニィの文化センターとユニテ・ダビタシヨン、マルセイユのユニテ・ダビタシヨン、エンヌビックの自邸)を調査した。そこには、鉄筋コンクリートの建物の保存・維持の様々なあり方が見られる。一部は従来の保存修復の手法に近いやり方で修理が行われ、一部は一度取り壊して新たに復元されている。あるいは全面的な保存修復をせずに小さな修理で維持されている場合もある。鉄筋コンクリート造の建物の保存は、いま様々な手法が試験的に実施されている状況といえる。そこで問題となるのが材料のオーセンティシティの保持ということであるが、これについてはオランダで活発な議論が交わされており、その記録をもとにした考察を平成24年度の日本建築学会大会で発表予定である。また、オーギュスト・ペレの鉄筋コンクリート造の建物の現状についても日本建築学会関東支部のシンポジウム「近代建築史の最先端」で発表した。 理念的な側面の研究に関しては、ラスキン、ヴィオレ=ル=デュク、ボイト、リーグルの諸著作を読み直しており、フランソワーズ・ショエの"L'allegorie du patrimoine"の読解に着手している。テオドール・プルードンなどその他のより実践的な建築家の保存論についても研究した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
オランダとフランスのいくつかの鉄筋コンクリート造の先端的な保存もしくは再建の事例を調査し、その手法と、その手法が採用されるに至る経緯を研究した。また、保存の理念に関する文献の調査にも着手しており、ほぼ当初の計画通りに進展している。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き保存に関する内外の文献を購入して、資料の一層の充実を図るとともに、保存修復の実例調査を行っていきたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度は、イギリスとドイツを中心に保存・活用の事例を調査する予定であり、研究費は主としてこうした調査費用に使われる。同時にいくつかの重要な文献を購入して資料の充実を図りたい。
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