平成25年度は、イタリアにおける鉄筋コンクリート造建造物の保存の調査を行い、あわせて歴史的建造物の鉄筋コンクリートによる修復の例をいくつか調査した。ローマのPalazzo dello SportとPiazzale dello Sport、フィレンツェのChiesa del Sacro Cuore、ヴェネツィアのRietvelt’s Pavilion、ミラノのTorre Verascaがその主だった対象であるが、いずれもさしたる修復もなく現役の施設として通常に利用されていた。もっともPiazzale dello Sportの維持状態はさしてよいようには見えなかったが、使われているようである。またヴェネツィアの Rietvelt’s PavilionはオランダのRietvelt’s Pavilionが一度取り壊して再現されたことを考えると感慨深いものがある。これまで、フランス、イギリス、オランダの各地で鉄筋コンクリート造の保存修復の例を見てきたが、その建物がそのまま残されるか、取り壊されるか、場合によってはレプリカ的に再建されるかは、建物自体の構造強度とか維持状態の良さとはあまり関係がないように思われた。つまりそれは、鉄筋コンクリート保存の技術的な問題であるよりも、その建物の存在価値とその建物に関わる人々の意識の問題であるように思われる。そうした人々の意識の問題も含めた保存活用の意義についてまとめていきたいと考えている。 なお、平成25年度の成果として日本建築学会大会において「材料のオーセンティシティと古さの価値」と題して発表した。また、オーギュスト・ペレの鉄筋コンクリートによる都市計画について平成26年度の日本建築学会大会で発表予定である。
|