鉄筋コンクリート造の歴史的建造物を、従来の石造や煉瓦造の組積造、もしくは木造の保存と同じ考え方とやり方でできるかというのが本研究の課題であったが、かなり困難も伴うが可能であるというのが、概ねの答えである。蘭・英・独・仏・伊の各国で鉄筋コンクリート造の建物の保存実態を見てきたが、完全な保存の例もあれば、再現保存の例もあり、それぞれ手法は一様ではない。鉄筋コンクリート造の建物の保存の現実が、材料のオーセンティシティの問題に再考をうながしているところもある。多くの例を示すことによって、使いつつ残すという建築が引き受けざるを得ない困難な問題の実際を示し、オーセンティシティの概念の有効性を示したい。
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