森田は「建築とは何か」という問いを建築論の根本課題とし、晩年の『建築論』に至るまで思索を続けた。その基盤となったのがウィトルウィウス建築書の研究であり、古典主義的建築論であり、森田はプラトン主義的本質論として建築論を構想していた。しかし、森田はヴォリンガーのゴシック建築論にも関心を寄せたが、ヴォリンガーはそこで制作の主体の問題を論じていた。また、森田が座右の書としたヴァレリー「エウパリノス」は、古典主義的でありつつ反イデア論的立場に立つ制作論である。本研究では、森田慶一の建築論を本質論から制作論への再構成に向けて、これらの手がかりを発見することができた。
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