研究課題/領域番号 |
23560764
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研究機関 | 京都工芸繊維大学 |
研究代表者 |
矢ヶ崎 善太郎 京都工芸繊維大学, 工芸科学研究科, 准教授 (90314301)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 煎茶 / 文人 / 数寄空間 / 大工 / 臥龍山荘 / 塵外荘 / 野村得庵 / 河内寅次郎 |
研究概要 |
文人といわれる人たちの動向を追うことによって、彼らが造営した数寄的な空間の特徴を検証し、近代の数寄空間の成立と文人たちの動向との関係を明らかにする目的で、本年度は主として四国・中国地方を中心に現地調査を実施、あわせて関連文献の収集と分析を行った。先ずは、日本の近代に成立した数寄的な空間について、既往の研究および調査報告等を悉皆的に調査し、所在地や写真などのほか特徴の基本データをリスト化した。また、文人茶・煎茶に関する茶書の調査を行い(国立国会図書館、宮内庁書陵部ほか)、結果をデータベース化した。日本で煎茶文化が伝播し隆盛した地域における文人たちの足跡をたどり、近代数寄空間遺構およびそれにかかわる建築遺構の調査を行い、図面の作成および写真撮影等による記録を作成し、意匠的特徴を解明するための基本資料の作成を実施した。当初計画で行う予定であった東海地域においては熱海の塵外荘を調査し、近代を代表する数寄者の一人である野村得庵の煎茶趣味について考察した。また、長野県松代町など、文人を多く輩出した地域の建築的環境を調査した。調査依頼先の都合などから、本年度の当初計画にはなかった四国・中国地方および九州地域の調査も行った。鹿児島県鹿児島市の玉里邸にみる島津家に関するもの、島根県津和野町の堀家と煎茶趣味に関するもの、愛媛県大洲市の臥龍山荘における河内寅次郎と大工・中野寅雄に関するもの、新居浜市の廣瀬宰平と大工・八木甚兵衛に関するもの、島根県津和野町における煎茶文化に関するものなど、これまで未知であった文人と足跡と煎茶文化の伝播に関する史料、および建築の造営にかかわった大工の造営史料などの存在を明らかにすることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
所定の研究を進めるに先だって行うべき既往研究の整理、及び基本文献の確認は概ね終了した。ただし、基本文献については未購入の物があり、さらなる発掘は継続して行う必要がある。実地調査については調査依頼先の都合等もあって調査地の変更を行い実施したが、当初計画していた以上の件数を実施することができた。調査結果の整理を研究協力者に依頼し、調査と同時並行して行う予定であったが、実地調査の成果が期待以上のものであったこともあって、未終了の状況である
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今後の研究の推進方策 |
基本文献の発掘を継続して行い、データベース化を推進する。実地調査先を計画的に選択し、実施する。本年度は昨年度予定以上の成果を得た四国、中国地域および九州地域の調査を継続するとともに、特に東海・北陸、関東地域にも範囲を広げて調査を行う。昨年度の調査結果を含め、調査結果の整理を円滑に遂行する。
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次年度の研究費の使用計画 |
物品費として基本資料の入手を積極的に行う。四国・中国地域、九州地域での実地調査を継続して行うとともに、新たに東海・北陸、関東地域での調査を行うために、旅費の配分を計画的に行う。昨年度、実地調査に予定以上の労力と経費を費やしたことから、調査データの整理のための人件費・謝金が本年度に繰り越されている。本年度は調査結果の整理を年度初めから積極的に進め、昨年度からの繰越金による整理を年度の前半に行い、後半は本年度の人件費・謝金から支出する。
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