研究課題/領域番号 |
23560764
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研究機関 | 京都工芸繊維大学 |
研究代表者 |
矢ヶ崎 善太郎 京都工芸繊維大学, 工芸科学研究科, 准教授 (90314301)
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キーワード | 煎茶 / 文人 / 数寄空間 / 大工 / 茶室 / 露地 |
研究概要 |
文人といわれる人たちの動向を明らかにする基本史料を収集し、それをデータベース化する作業を継続した。 前年度の研究成果から、文人といわれる人たちが活躍したと思われる地域を推定し、地元博物館等で資料を収集した。また、国立国会図書館、国立公文書館所蔵にかかる、煎茶文化に関する基本史料を可能なかぎり収集した。 文人たちの足跡および建築・庭園遺構調査を行い、建築の図面化およ写真記録を作成した。昨年度に引き続き関西地域を継続して調査したほか、当初計画に従って中国、四国の瀬戸内海沿岸地域を中心に調査を実施し、その成果を整理した。また、九州の鹿児島県および長崎県内で関連遺構の存在が明らかになったことから、同地域での調査も行った。中国・四国地域での調査では新出資料の発見もあり、新たな知見を得ることができた。愛媛県大洲市の臥龍山荘に関する調査では、昨年の基本調査に続いて本年度は詳細調査を実施した。偶然にも地元の旧大工の家から臥龍山荘造営に関する膨大な量の資料が見つかったため、急きょその整理を行い、次年度に考察を行うための基本資料を作成した。また、島根県津和野町の旧堀家では、煎茶文化に関する史料が膨大に見つかったほか、建築・庭園調査の結果、煎茶のための建築と庭の存在が確認できた。当地域に多くの文人たちが集まり、煎茶文化の伝播に大きな役割を果たしていたことが明らかになった。 研究成果を学会に発表したほか、単行本として発行した関連書籍に公表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度の成果として確認できた基本資料の収集ができた。建築・庭園調査については昨年度からの継続地も含め、当初計画通りの地域で調査が実施できた。昨年度に続き、本年度も調査に多くの時間と経費をかけたことから、調査結果の整理とまとめの作業がいくぶんか遅延しており、次年度はより綿密な計画のもとで整理考察作業を行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
資料の発掘・収集は継続して行い、整理作業を行う。当該年度においては新発見資料がいくつかあったことから、これらの調査に多くの時間と経費を費やした。そのため他地域での調査が予定通り実施できなかったことと、調査結果の整理を進めるにあたって必要としていた予定の人件費の支出ができなかったため残額が生じるにいたった。次年度は新たに発掘された新資料の整理と考察を優先して行うことで人件費を計画的に支出し、研究成果のまとめに反映させる。また、これまでの研究で煎茶文化が伝播していた可能性の高い北陸、東北、および関東地方での調査も可能な限り行う。得られた研究成果を報告書にまとめ、学会等に発表する。
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次年度の研究費の使用計画 |
当該年度においては新発見資料の調査に多くの時間と経費を費やしたことによって生じた未調査建造物について優先的に調査を行うために調査旅費を支出する。同じく当該年度において予定通り行うことができなかった調査結果の整理を優先して進め、さらに三年間にわたる調査結果の整理とまとめのための人件費と謝金を計画的に支出する。また継続して資料の購入を継続する。未調査地域である北陸、東北、関東地方における補足調査を行うために旅費の配分を計画的に行う。これまでの研究成果をまとめ報告書として公表するための印刷費を支出する。
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