研究課題/領域番号 |
23560768
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研究機関 | 滋賀県立大学 |
研究代表者 |
冨島 義幸 滋賀県立大学, 環境科学部, 教授 (80319037)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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キーワード | 阿弥陀如来 / 浄土信仰 / 浄土教 / 密教 / 顕密仏教 / 阿弥陀堂 / 浄瑠璃寺 / 法勝寺 |
研究概要 |
平安時代以降、中世において日本で広く信仰された阿弥陀に関わる建築造形について、建築もちろん美術・仏教・文学をも視野に入れて検討をおこなった。主な内容と成果は以下のとおりである。(1)現存唯一の九体阿弥陀堂を擁する浄瑠璃寺について、その伽藍の再検討をおこなった。結果、これまでは園池を中心に、その西に阿弥陀如来像を安置する本堂(九体阿弥陀堂)、東に薬師如来像を安置する三重塔が、西方極楽浄土・東方浄瑠璃世界という仏教的世界観の方位にもとづいて配置される構成とされてきたが、三重塔が建立された当初、安置仏は釈迦であったことを明らかにした。薬師如来像は明治までは九体阿弥陀堂の中尊脇に安置されていた。また、これまで三重塔の壁画の主題は法華経曼陀羅とするのが通説であったが、じつは釈迦八相図で、この三重塔は釈迦・法華信仰にもとづく塔であったことを明らかにした。(2)浄瑠璃寺に残る平安時代後期の大日如来像が安置された仏堂について検討し、真言堂(秘密荘厳院)の本尊であった可能性の高いことを示した。その空間構成は、両界曼荼羅と大日如来を併置するもので、中川寺成身院をはじめ、浄瑠璃寺のある小田原地域の寺院に広がりのあるもので、いわゆる「浄土教伽藍」とされる伽藍における、顕密仏教の理念のあり方の一端が明らかになった。(3)錐点をもつ仏像の造像手法についての調査研究のなかで、三重・妙福寺の2体の金剛界大日如来像について検討し、それらのうちの一号像が平等院鳳凰堂阿弥陀如来像と同じ型にもとづいていることを指摘した。平安時代の阿弥陀堂の重要な空間構成要素である阿弥陀如来像の造形的特質や手法の一端を推定した。なお、(1)(2)については該当年度に冨島義幸「浄瑠璃寺伽藍再考」、(3)については冨島義幸「錐点から見た平安時代後期の造像修法の一側面」として公表している
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
該当年度の成果が示すように、阿弥陀浄土信仰の重要な伽藍である浄瑠璃寺について、新たな知見が得られ、阿弥陀堂の思想において、もっとも重要な阿弥陀如来像の造形の特質の一端を明らかにすることができた。また、常行堂の正統な本尊とされている宝冠阿弥陀についての研究をすすめるなか、宝冠阿弥陀を中尊とする醍醐寺蔵阿弥陀三尊像の赤外線調査をおこない、次年度の成果発表の準備を進めているところである。
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今後の研究の推進方策 |
(1)該当年度に引き続き、阿弥陀浄土信仰にかかわる建築・伽藍の空間構成思想の分析をすすめるとともに、彫刻や美術作品か阿弥陀信仰にもとづく建築空間の造形理念を読み解いていく。(2)該当年度におこなった調査成果である、醍醐寺蔵阿弥陀三尊像のデータをもとに、宝冠阿弥陀を本尊とする空間についての研究の成果をまとめる。(3)震災の影響で調査が遅れていた、東北地方の阿弥陀信仰にかかわる建築・美術作品の調査を重点的にすすめる。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度の主たる経費は、阿弥陀浄土信仰にかかわる建築・伽藍の空間構成を分析するためCADソフトを購入、また東北地方の阿弥陀信仰にかかわる建築・美術作品の調査を重点的にすすめるべく、そのための調査旅費として使用する予定である。
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