研究課題/領域番号 |
23560768
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研究機関 | 滋賀県立大学 |
研究代表者 |
冨島 義幸 滋賀県立大学, 環境科学部, 教授 (80319037)
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キーワード | 阿弥陀堂 / 阿弥陀如来 / 平泉 / 浄土教 / 密教 / 浄土信仰 / 松川二十五菩薩像 / 無量光院 |
研究概要 |
平安時代後期を中心に、阿弥陀信仰の建築造形と空間構成の理念、そこから浮かび上がってくる阿弥陀信仰の実態、およびその基盤となる中世仏教について検討した。主たる内容・成果は以下のとおりである。 ①中世阿弥陀信仰の造形の在り方に関する調査研究として、岩手県の松川二十五菩薩像の調査をおこない、阿弥陀聖衆来迎の空間造形の検討をおこなった。また、平泉の無量光院・毛越寺の発掘現場における調査を継続し、庭園をふくめた阿弥陀浄土の建築造形の復元的検討をおこなった。そして、これら平泉における個別調査研究の成果に、京都を中心としたこれまでの阿弥陀信仰の建築空間についての研究成果をあわせ、岩手県教育委員会・平泉町ほかの依頼による「「平泉」拡張に係る国内専門家会議」基調報告をおこない(冨島義幸「平泉における「浄土世界」の可能性と課題」)、平泉における世界遺産拡張にむけての学術的な基盤づくりに貢献した。 ②阿弥陀信仰を中世仏教のなかで位置付けなおすべく、より広い視野から中世仏教の在り方について考察し、1. 冨島義幸「建築と景観の統合―中世顕密主義のコスモロジーと両界曼荼羅―」(末木文美士他編『岩波講座 日本の思想』、脱稿済み、岩波書店より2014年刊行予定)、2. 冨島義幸「塔・曼荼羅・王権―法勝寺八角九重塔と相国寺七重塔の意義をめぐって―」(長岡龍作他編『仏教美術論集』、脱稿済み、竹林舎より近日刊行予定)、3. 冨島義幸「日本中世における灌頂・修法空間の展開」(森雅秀編、脱稿済み、法蔵館より近日刊行予定)を執筆した。以上の学術論文において、阿弥陀信仰をふくめた中世顕密仏教の思想的基盤としての密教の両界曼荼羅の意義を具体的に明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
該当年度は、震災の影響で遅れていた東北地方の阿弥陀信仰に関わる建築・美術・庭園造形の調査をすすめるべく、平泉において調査研究を集中的におこなった結果、調査研究はおおむね研究計画どおりの進捗状況となった。 また、阿弥陀浄土信仰を中世仏教における位置付けなおし、その造形の意味を検討する基盤を築くべく、中世仏教の在り方の検討を進め、浄土信仰の位置付けとその造形の意味についてふれた学術論文を3編執筆することで、申請課題の枠をこえて、研究を補強する基盤を構築しつつある。
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今後の研究の推進方策 |
①引き続き、建築を中心に庭園・彫刻・絵画などをふくめた中世阿弥陀信仰に関わる建築の空間構成理念の検討をすすめる。本研究における重要性、発掘等地域での調査の進捗状況から、平成25年度も平泉を主たる調査対象地域とする。 ②『観無量寿経』、『無量寿如来観行供養儀軌』など、顕密双方の阿弥陀信仰に関わる経典・儀軌を分析し、その結果と①の建築空間の構成理念や法会、本尊の形式、納入品などから見えてくる信仰のあり方とを対照することで、建築造形・空間構成と仏教教義との関係を検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
主たる経費は、阿弥陀信仰に関わる建築空間の構成理念を分析・検討するためのパソコンソフト、美術史・仏教史関係の図書の購入、平泉・京都・関東を中心とした建築・庭園・美術・文献等の調査旅費として使用する予定である。
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